【賃貸経営】知って得する土地活用術!建て替えなどによる業態転換を徹底解説してみます【イエカレ】


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このコラムのポイントアパートやマンション経営などで土地活用をしているものの「思うように収益が得られない」とお悩みのオーナー様も多いかもしれません。

人口減少と高齢化が進み、住宅ストックが増加している時代だとも言われています。アパートやマンションが供給過剰とも言われる状態のなか、選ばれる賃貸住宅にするためには、コンセプト型の特色ある新たな付加価値を加えたり、思い切って業態転換をして利益を生み出す建物に変えていく方法も考えられます。

今回のコラムでは、アパートやマンションの建て替えによる業態転換について詳しく解説したいと思います。

1.日本の建物の現状

総務省の「空き家等の現状について」より

空き家の総数は、1983年から2013年までの20年間で1.8倍(448万戸→820万戸)に増加しています。分譲マンションについては、築30年以上の物件が2021年末には250万戸近く、さらに2026年末には300万戸を超える と予想されています。

1-1.近年の建物事情

住宅を選ぶ際に重要となる住宅の性能についてはどうでしょうか。

耐震性では、新耐震基準を満たしていない住宅の戸数は、既存ストックの4分の1を占めています。
バリアフリーについては、2箇所以上の手すりの設置や段差解消、車椅子で通行可能な廊下幅の確保などのバリアフリー化がなされた住宅は5.4%と低く、借家ではその半分です。その一方で、新築住宅については、耐震性能や省エネルギー性能の向上が進んでいます。

こうした老朽化が進んだ住宅の機能を改善するには、改修・建て替えなどによる再生が必要です。特に分譲マンションでは、築30年以上の物件は今後急速に増えることが見込まれています。老朽化したストックが増大していく中で、入居者に選んでもらうためには、住宅価値の維持・向上を図るための取組みが求められています。

1-2.今後予想される建物事情

日本は、少子高齢化によって人口が減少しており、今後も減少が続くと予想されます。これまでは人口減少とは対照的に、世帯数は増加傾向にありました。しかし、この世帯数の増加も2023年をピークに以後は減少に転じると予想されており、今後は住宅需要が減少して、不動産価値が下落する危険性があります。これを「2023年問題」と呼びます。不動産価値の下落リスクは地域によって異なりますが、都市部は人口が集中しているため、比較的影響が少ないと予想されています。

そのほか、1947〜1949年に生まれた「団塊の世代」の方々が75歳を超えることで、医療・介護などの社会保障制度に大きな影響を与える「2025年問題」にも直面しています。現在、高齢者が居住している持ち家に相続が発生した場合、利便性の低い地域や老朽化した建物では、家族が相続した実家を売却するケースが増えると予想されます。これにより中古物件の供給が過多となり、価格が下落する可能性があります。

一方で、2025年には大阪万博の開催が予定されており、国内外から多くの人が訪れることが見込まれています。そのため、旅行客用の宿泊施設やマンションの建設が増えて、急激に都市部の土地や不動産価格が上昇するという予想もあります。

海外からの旅行客は、関西地方以外の都市部や地方の旅行も楽しむ可能性もあるため、日本全体の不動産価格指数も上昇するのではないかとの予測もあります。

また、世帯類型別に住宅ストックの分布をみると、65歳以上の単身または夫婦2人の持家世帯の約半数が100m2 以上の広い住宅に住む一方で、4人以上の家族の29%が100m2 未満であるなど、既存の住宅ストックと取得ニーズにミスマッチがあります。これは、既存住宅のストック活用が不十分なことが背景にあります。

今後は、既存住宅の市場価値が適切に評価されて流通がスムーズになり、住宅購入希望者のニーズに合った手に入りやすい既存住宅が豊富に提供されることが望まれています。

1-3.建て替えにより活用できる物件

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建て替えによって活用されている建物には、さまざまなものがあります。

● 社会の変化に伴うニーズの変化により使われなくなったが、まだ使える建物
● 古民家、蔵、古い倉庫などの歴史的建造物

上記の例のように、すでに役目を終えつつある建築物でも「地域のニーズを満たす場所にある」「構造や耐震性能の安全性が確保されている」「他にはない価値がある」などの条件を満たすのであれば、建て替えによって新たな魅力を生み出して、活用できる可能性があります。

近年よく見かけるようになった古民家カフェや旅館、廃校を利用したオフィス、博物館といったものは、元々の建物の特性を活かしながらリノベーション工事や建て替えが行われています。

さらに、老朽化した工場・店舗を抱える経営者の方の中には、事業継承が難しく、工場・店舗の処分に頭を悩ませている方もいらっしゃるでしょう。仮に事業継承することは無理だとしても、工場を賃貸マンション事業に転換したり、店舗や賃貸住宅を複合的なマンションなどへ転換して活用できるケースも実際にはあります。

2.建て替えの基礎知識

それでは、もし業態転換で建て替えを検討する際には、どのくらい費用がかかり、どのような手続きが必要なのでしょうか。
ここからは、おおよその目安となる金額を示しながら説明します。

2-1.建て替えの費用

賃貸住宅を建て替える時には、まず居住中の人に退去してもらう必要があります。入居者の退去費用の相場は「1部屋あたり家賃6ヶ月分と引っ越し費用(計50〜100万円)」と言われます。

次に、古くなった建物を解体する費用が必要です。解体費用(坪単価)は建物の構造により異なりますが、相場は以下のようになっています。

▼解体費用(坪単価)

木造:4〜5万円
鉄骨造:6〜7万円
鉄筋コンクリート造:7〜8万円
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建築費用(坪単価)については、以下が相場となります。

▼建築費用(坪単価)
木造:77〜100万円
鉄骨造:80〜20万円
鉄筋コンクリート造:90〜120万円


たとえば、延べ床面積60坪の鉄骨造りのアパートから、鉄筋コンクリート造りの賃貸住宅に建て替える場合には、以下の費用がかかります。

解体費用 6〜7万円 ×60万円 = 360〜420万円
建築費用 90〜120万円×60万円= 5400〜7200万円
+退去費用50〜100万円×戸数


上記に加えて、諸費用として100〜200万円程度がかかります。

▼諸費用
● 地盤調査費
● 測量費
● 税金関係(不動産取得税、印紙税など)
● ローン関係費
● 地震保証料、火災保険料など
● 印紙代
● 登記費用
● 給排水関係費
● 式典費用

2-2.建て替え時期の目安

日本は地震が多く、古い建物を使い続けることは耐震性能の点で難しくなります。また、新しい家の人気が高いために、多くは30年ほどしか使われていないようです。

30年を超えると、空室率が高くなる、維持費が高額になるなどの問題が発生します。法定耐用年数は、木造で約20年、鉄骨で約30年、鉄筋コンクリートで50年となっており、建物によってはもっと長く使えるものもありますが、安全性とニーズを考慮すると、30年~50年が建て替えを考慮する時期と言えそうです。

3.土地活用の種類と特徴

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土地活用は、大きく分けて3種類あります。

● アパートやマンションなどで賃貸経営をする
● 施設を建設して経営する
● 売却してその資金を元手に新たな場所で土地活用を行う

賃貸経営は、アパートやマンション、戸建て、オフィスとして貸出したり、駐車場やトランクルームとして貸出したりすることを指します。定期借地・等価交換・土地信託(プロに任せて収益を上げてもらい配当金を受け取る)といった方法が賃貸経営に当たります。

施設の建設は、太陽光発電をするためにパネルを設置したり、商業施設や医療施設、介護施設を建てて経営したりすることを指します。

売却とは、単純に持っている土地を売ることです。

それぞれの活用方法をメリット別に分けると、以下のようになります。

①安定した収益性があるマンション経営、介護施設の経営
②リスクが少なく初心者にも向いている駐車場やトランクルームの貸出
③回収期間が早く利回りがよいオフィスの貸出、トランクルームの貸出、商業施設の建設・運営

また、立地条件によって適した土地活用の方法も異なります。

都市部では マンションやアパート、駐車場、商業施設などのニーズがあります。とくにドラッグストアやコンビニは常にニーズがあります。

地方や田舎では、太陽光発電の設置、一戸建ての賃貸、トランクルームなどの活用が多くみられます。収益が見込めない土地であれば、売却を選ぶことも多いようです。収益性のある土地活用をしたいのであれば、地域のニーズを調査して、必要とされているものを建てる必要があります。

4.建て替えによる業態転換

今よりも収益性を上げたいけれど、新たに建て直すのが難しい場合には、改装によって業態転換をする方法があります。これを「コンバージョン建築」といいます。近年では、このコンバージョン建築に関心が集まっています。

4-1.コンバージョン建築と新たな可能性

コンバージョン建築とは、時代の変化に伴う社会環境や周辺環境の変化のために、本来の用途のニーズがなくなり、使用されなくなった建物を別の用途に変更して再利用することを指します。

リノベーションが既存の建物の資産価値を高めるために行われるのに対して、コンバージョン建築は用途の変更が目的であることから、全面的に改装して、まったく新しい建物として再生させます。新たに建て替えるよりも費用を抑えられるほか、工期も短縮しやすくなります。

4-2.コンバージョン建築のメリット

コンバージョン建築は、既存の建物を解体して新しい建物を建てるよりもコストがかからず、環境負荷の観点からもメリットがあります。古い建物の持つ個性を活かして魅力のあるデザインにできるほか、建て替えると容積率が減ってしまうような建物で業態転換をする際にも有利です。

2003年には、採光面積の緩和措置に関する告示(国土交通省)と、コンバージョン事業に対する補助制度(自治体)が制定され、コンバージョンを誘導するための政策がとられています。時代に合わせて業務転換をすることで、新たなニーズを獲得して、物件の収益性を高められる可能性が期待できます

4-3.コンバージョン建築のデメリット

コンバージョン建築には、耐久性に対する不安、自由度の低さといったデメリットがあります。

1981年以前に建てられた建物は旧耐震基準で建てられているため、耐震性能が低い傾向があります。そのため、固定資産税率が上がってしまったり、利用者が安全面に不安を感じたりするケースがあります。また、定期的に修繕や維持管理を行う必要があり、コストが発生します。

また、元の建築の特徴を活かすのがコンバージョン建築のため、施工内容の自由度は低くなりがちです。以前の利用目的が限定された建物であるほど、自由度は低くなります。元の建物の構造を活かし、かつ新しい利用目的に対しても魅力を発揮できるようなアイデア・工夫が必要になります。

そのほかにも、関係法規をクリアするのが難しい、中古物件に対する融資が受けにくいなどのデメリットもあります。

5.業務転換のポイント

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実際に業態転換をするには、どのような準備や手続きが必要になるのでしょうか。

5-1.自治体への確認申請

建築物を一定の用途で新たに使用する場合、自治体への申請が必要になります。具体的には、以下のような条件のときに建物の用途変更手続きが必要になります。

● 「特殊建築物」への用途変更である
● 類似の用途」以外への変更である
● 用途変更する部分の面積が200m²を超えている

確認申請には、確認申請書や委任状建築計画概要書、設計図書が必要です。

また、労働基準法や建築基準法では、確認申請を行わずに用途変更を実施すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となります。手続きや工事をスムーズに進めるために、必要な書類や資料の事前準備を徹底しましょう。

5-2.地域のニーズにあっているか

建物の周辺環境が以下に該当する場合は、コンバージョン建築を検討してみましょう。

● 駅から500m以内と利便性はあるものの、小規模で一方通行の道路に面した地域
● 空室率の高い建物を建て直しても経済的に循環していかない地域
● 建て替える余力は無いがニーズのある地域

このような場所では、地域に暮らす住民のニーズを調べる必要があるため、市場調査(過去の顧客ニーズ)とマーケティングリサーチ(将来の予測)が行われます。

これらの調査では、過去の人口の増減や競合物件、駅やバス停からの距離、周辺環境(商業施設・企業・学校など)といった人が集まる要素を数値化してニーズを可視化します。

6.建て替えによる活用事例4選

コンバージョン建築は、サステナブル(持続可能)な建築方法であるため、世界中で関心が高く、日本国内においても個性的な建築物が数多く作られています。

ここからは、国内での活用事例をご紹介します。

6-1.事例1

オフィスビルを賃貸住宅とSOHOにコンバージョンした例|ラティス芝浦

外装については、元の建物の磁器タイルの上に塗装を施すことで、廃材を抑制しています。内装は、直天井の採用や設備配管の露出処理等によって、広々とした心地よい空間となっており、環境保全にも配慮されています。オフィスビルを賃貸として改修して、新しい価値への転換によってその寿命を延ばす、リニューアルの優良なモデルとなっています。

6-2.事例2

アパートから商業施設へコンバージョンした例|表参道ヒルズ

古いアパートや中古の商業ビルでも、コンバージョン建築を行なうことで、地域のシンボルとなる建物に再生させて、利益を生み出す事業を継続しています。

6-3.事例3

倉庫を生き生きとした商業施設として再生|赤レンガ倉庫

この赤レンガ倉庫は、横浜が「歴史的な貿易の拠点」であることを象徴しています。

当時の最先端技術を集めて作られた建物は、創建当時の材料からきめ細かく復元されています。耐震補強から歴史的な窓の細部に至るまで、現代の技術と創建当時の技術を結集させて作られたことで、横浜港湾地域における都市再生のきっかけとなりました。

元は倉庫として使われていましたが、業態転換によっておしゃれな商業施設・観光スポットとして活用されています。歴史的な建造物の保存としても有意義なコンバージョン建築です。なお、赤レンガ倉庫は、ユネスコ文化遺産保全のためのアジア太平洋遺産賞を受賞しています。

6-4.事例4

解体した建材を再利用して古民家を移築再生|料理宿 やまざき(2010年度グッドデザイン賞受賞)

石川県の築百年を経た古民家が福井県へ移築され、料理旅館として生まれ変わった事例です。落ち着いた雰囲気やその建物の持つ趣が、旅館としての癒し空間に適しています。

コンバージョン建築によって、時代に合わせた新たな価値を付加して、収益を得られる建物に変えることで、歴史的価値のある建物を後世に残すことができます。

まとめ

今後、少子高齢化が進み、空き家の増加が予想されています。建て替えをして建物の寿命を延ばしたり、コンバージョン建築によって既存の建物の業態を転換したりすることで、新たな価値が加わり、収益の向上が期待できます。

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(記事企画/監修)イエカレ編集部
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