【イエカレ】家を貸したときの所得税の還付について|損益通算処理ができる条件とは

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このコラムのポイント

今回のコラムでは「自宅を貸すときの税金」について解説してみます。

不動産投資や、家を貸し出して賃料収入を得たときのメリットの一つに、よく「損益通算による所得税の節税」が挙げられます。

家を貸し出す際は、高い賃料で貸し出したいと思うのが当然でしょうし、節税ができるならそのメリットも享受したいと思うのも当然の話しです。

ただ、いささか水を差してしまうかもしれませんが、この損益通算による節税法は「ある条件」が整ったときにできるものになります。ですから「所得税の節税ができるから家を貸し出す」といった事が主たるメリットにはなりにくいため、勘違いを防ぐ意味でも、噛み砕いてお伝えしたいとも思います。

では、家を貸したときにできる所得税の節税に、一体どのような意味合いがあるでしょうか。実際に家を貸し出す際は、留守宅専門の管理会社へ相談することになると思いますが、こんな話も知っておいて頂くと話もスムーズになる場合も多いです。さっそく、確認してみましょう!



1.家を貸してもサラリーマンは個人事業主にはならない

よく勘違いされますが、サラリーマンが家を貸しても個人事業主にはなりません。

個人事業主とは、法人を設立せず商売を営み、事業所得を得ている個人のことを言います。 例えば、弁護士や税理士、フリーランス、法人化せずに事業を行っている美容師や飲食店の店主等が個人事業主です。

個人の所得は、収入の種類によって、給与所得や不動産所得、事業所得、譲渡所得、雑所得、山林所得、退職所得、利子所得、配当所得、一時所得の10種類に分類されています。

このうち、家を賃貸にしたとき等で、その不動産から得られる所得は「不動産所得」になります。 個人事業主がビジネスによって得られる所得は「事業所得」です。

不動産所得は事業所得とは異なるため、家賃収入を得ている個人は個人事業主ではないということになります。

不動産賃貸業が個人事業主に勘違いされる原因として、不動産賃貸業も一定規模以上になると税務上、「事業的規模」に該当するというルールは存在する点が挙げられます。

事業的規模とは、アパートのような住宅であれば10室以上からなる物件が事業的規模です。 事業的規模に該当すると、確定申告で最高65万円の青色申告特別控除が適用できる等のメリットが発生します。

ただし、事業的規模であっても、あくまでも得られる所得は不動産所得です。 そのため、事業的規模の不動産賃貸業を行っていたとしても、個人事業主にはならないことになります。

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2.主たるメリットは不動産収入を得られること

家を貸すときの主たるメリットは、あくまでも不動産収入を得られるという点です。

前述したとおり、不動産収入による所得の名称は、不動産所得です。 不動産所得は家賃収入のことではなく「必要経費を差し引いた利益」を指します。

不動産所得の計算式を示すと、以下の通りです。

不動産所得 = 家賃等収入金額 - 必要経費

不動産所得には所得税が生じますが、所得税は所得が増えるほど税率も上がる累進課税方式を採用しています。

他に給与所得等の所得があれば、それに不動産所得も加算され、税率が決まります。

そのため、家を貸すことで不動産所得が増えれば、所得税はむしろ増えることが通常です。 家を貸すことは、所得税の節税とは真逆の方向に向かうことが一般的となっています。

3.税金の節税はあくまでも副次的なメリット

家を貸すと、場合によっては所得税が減るケースもあります。 それは、「損益通算」という仕組みを使った節税方法が存在するからです。

所得税は、不動産所得や給与所得等を合算した所得を元に計算されるのがルールです。 合算して所得が増えるのは、合算されるそれぞれの所得がプラスであることが前提です。

しかしながら、不動産所得は家賃収入から必要経費を引いた利益であるため、場合によっては不動産所得が赤字になってマイナスとなることもありえます。

プラスの所得とプラスの所得を合算したら、所得が増え、税金も増えるのが基本ですが、プラスの所得とマイナスの所得を合算したら、所得が減り、税金も減るという理屈も成り立ちます。

国税庁もプラスの所得とマイナスの所得を合算して所得を減らすことは認めており、この手続きを「損益通算」と呼んでいます。

例えば、不動産所得が▲100万円、給与所得が800万円であれば、損益通算によってその年の所得を700万円(=800万円-100万円)とすることができます。

給与所得者は、会社が給与所得を前提に所得税を源泉徴収していることが通常です。

例えば、源泉徴収によって800万円を前提に所得税を支払っている人は、損益通算によって所得が700万円になれば税金は納め過ぎていたということになります。

そこで、確定申告で損益通算を行うと、払い過ぎていた税金の還付を受けることで節税ができます。

このように不動産所得が赤字になれば、理論上、損益通算によって所得税を節税することは可能です。 ただ、毎年赤字になるような賃貸経営なら、そもそも家を貸す意味がなくなってしまいます。

あくまでも損益通算は、たまたま不動産所得が赤字になった年にできる節税とお考え頂き、節税目的で家を貸すといった賃貸経営のメインになるメリットではないことは知っておいて下さい。

例えば、貸している家の外壁塗装を行った年は、不動産所得が赤字になる可能性はあります。 外壁塗装は、一括で経費計上できる修繕費であり、金額も大きいことから、実施した年は不動産所得が赤字になりやすいです。

外壁塗装によって、たまたま不動産所得が赤字になれば、その年は損益通算によって所得税の節税ができるというわけです。

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4.確定申告を行うための注意点

また、不動産所得は必要経費を多く計上すれば赤字になりやすいため、損益通算によって節税できる可能性が上がります。

不動産所得の必要経費になるものは、以下のような費目が挙げられます。

【必要経費として認められるもの】
公租公課
損害保険料
修繕費
ローン保証料
入居者募集費用
管理委託料
共用部の水道光熱費
通信費
旅費交通費
接待交際費
新聞図書費
消耗品費
立ち退き料
青色事業専従者給与
借入金利子
減価償却費

たくさんありますね。家を貸し出すなら、これらの必要経費項目は損をしないためにも知っておいた方が良いでしょう。

しかし、その中には、通信費や旅費交通費、消耗品費等の家事消費(個人的な支出のこと)と公私混同されやすいものもあります。

家事消費と混同されやすいものに関しては、記録や領収書をしっかりと残し、「家の賃貸経営のために必要な支出であった」ことを客観的に証明できるようにしておくことが注意点になります。

まとめ

以上、今回は、家を貸すときの税金について解説してきました。

家を貸して経費が掛かりすぎた場合、損益通算によって所得税の節税ができることは、知っていると良いことに間違いありません。しかし「所得税の節税になるから家を貸す」と意味を履き違えてしまわないように気を付けて頂きたかったことも今回のコラムの主旨でした。

損益通算はあくまでも副次的なメリットとして捉えて、やはりメインはより多くの収入アップを得ることを目的として家の賃貸経営を始めることをおすすめします。

損益通算や経費処理のことは、面倒にならないよう、家を貸す時には賃貸管理会社へ収支管理の相談もしたほうが良いでしょう。

家を貸す時は損をしないよう経費処理をすることが大切ですが、税務所から指摘を受けたときでも問題ないように領収書などの客観的な証拠物を取っておくこともお忘れなく。

▼イエカレでは土地活用や不動産管理に関する記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。

土地活用に関する記事:https://plus-search.com/chintai/archives.php
賃貸管理に関する記事:https://plus-search.com/property_management/archives.php
家の貸し出しに関する記事:https://plus-search.com/relocation/archives.php
不動産売却に関する記事:https://plus-search.com/fudousanbaikyaku/archives.php

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この記事について

(記事企画)イエカレ編集部 (記事監修)竹内 英二
(竹内 英二プロフィール)
不動産鑑定事務所及び宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。
大手ディベロッパーで不動産開発に長く従事してきたことから土地活用に関する知見が豊富。
保有資格は不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。大阪大学出身。

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