【土地活用】賃貸住宅の着工件数推移からみる土地活用の成功条件を解説します【イエカレ】


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このコラムのポイント

この記事では、現在の賃貸住宅の着工件数推移からみる「土地活用の成功条件」について考え、解説をしています。最近「この時期にアパート経営を検討することは本当に資産運用として有効なのか?」というご質問を多数お受けいたします。

その意味では意外と思う方も多いかと思いますが、賃貸住宅の着工件数推移は2021年に入って上昇カーブを描き始め、現在もそれが続いています。この賃貸住宅の着工件数については、2017年をピークに減少していたのですが、実は2021年から再び増加に転じていまるのです。

2021年からのこの現象は、コロナ禍といった厳しい問題もあったはずで一時的なものと思っていたものの、新たな兆しが出始めているとも見て取れます。時代的に、空き家問題や少子高齢化がささやかれる中、土地活用は今やるべきタイミングなのでしょうか。しかし、賃貸住宅の着工推移を見ると「今こそ土地活用をすべき!」と判断している人が多いのも事実のようです。なぜでしょうか? 早速、確認してみましょう!


現在の賃貸住宅の着工件数推移から、土地活用の成功条件を探ってみます!

1.賃貸住宅の着工戸数の推移

賃貸住宅の着工件数は、実は2021年と2022年の2年連続で上昇傾向が続いています。
国土交通省の建築着工統計によると、過去10年における全国の貸家の住宅着工件数の推移は下図の通りです。

出典:政府統計の窓口「住宅着工統計時系列表年次2022年

過去10年間の賃貸住宅の着工件数は、2017年まで着工件数が右肩へ上昇していました。
これは、2015年に相続税法が改正されたことにより、相続税の納税義務者が増え、相続税対策のために賃貸住宅を建設した人が増えたことが理由です。
2015年の相続税法改正では、基礎控除額が下がったことにより、相続税を納税しなければならない人たちが全国で2倍近く増える結果となりました。

ところが、2018年以降、急に賃貸住宅の着工件数が減りました。
これは、金融庁が賃貸住宅供給過剰を懸念し、全国の銀行に対してアパートローンの融資を厳しく監視し始めたことが理由です。
その後、同時期にスルガ銀行の不正融資問題も発覚したことで、金融庁の監視が一層強化され、銀行のアパートローンの貸し出しが一気にトーンダウンしてしまいました。

一方、見逃してはならないのが、全国の「納税義務者の割合」です。これは現在、増加傾向にあります。 「2021年(令和3年)分相続税の申告事績の概要」によると、全国の相続税納税者の人数と割合は以下の通りです。

画像出典:国税庁「令和3年分相続税の申告事績の概要

ご覧頂くと一目瞭然ですが、2015年には相続税法の改正により4.4%から8.0%へと倍近く増えています。その後も、微増傾向が続いており、2021年までのデータではありますが、そこでは、なんと9.3%にもなっている状況です。 相続税納税義務者が増えている理由はなんでしょうか。

これは【昨今の地価上昇】に原因があります。全国の土地価格は総じて上昇傾向が続いており、それに伴い土地の相続税評価額を決める相続税路線価も上昇しているのです。資産価値が上がってしまっていることから、相続税対策が必要な人も増えているわけです。

では「これが賃貸住宅の着工件数の増加と、どういう関係があるのか?」をご説明します。
そのポイントは、昨今、特に首都圏では住宅価格も上昇していることにより、持ち家の購入を諦め、賃貸住宅を借りる人が増えていることに繋がっています。その結果、首都圏をみると賃貸住宅の賃料が微増している状況です。首都圏のマンションとアパートの賃料の㎡あたりの単価推移は下表のようになっています。

単位(円/平米)
マンションアパート
2019年2,5982,164
2020年2,6602,177
2021年2,7142,251
出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「年報マーケットウォッチ2021年・年度

相続税対策が必要な人は増えており、かつ、賃貸住宅の賃料も上昇しています。
そのため、土地オーナー様を中心に「賃貸住宅を建てたい」というニーズが以前にも増して高まっていると見て取れます。従って、2021年以降は賃貸住宅の着工が増加に至る変化が生じ始めたのだといえるわけです。

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2.土地活用の成功条件

では、これらの考察を踏まえて、いまこの段階での「土地活用の成功条件」について解説してみたいと思います。


2-1.成功条件①:タイミングを逃さない

これは土地活用に限りませんが、土地活用もひとつの投資ですから、それで成功するには「タイミングを逃さない」ことが最も重要です。

昨今は”総じて”低金利環境にあることから、アパートローンを組むには良い環境にあるといえます。加えて、上述した通り賃貸需要の伸びも手伝い賃料の上昇傾向が出始めてきたことから、その意味では、今、そうしたエリアにお土地をお持ちで活用を検討している方にとって新築を着工する条件は揃っていると言えます。

なお、近年は贈与税に関して気になる話題も浮上していますのでチェックがお済みでない方はこれを機会に情報を集めてみて下さい。
それは「暦年贈与制度の廃止」の噂です。(2023年時点ではまだ撤廃されていません。)
暦年贈与とは年間110万円まで贈与税が非課税になる制度を言います。
暦年贈与を使うと、親の財産を減らし、子に財産を移転させることができるため、昔から相続税対策として用いられてきました。

もし仮に暦年贈与がなくなれば、効果的な相続税対策を1つなくすことになります。
そうなると、アパート経営による相続税対策の重要性と存在感が増してくると考えられます。しかし、暦年贈与はいつなくなるかは現状では不明なため、オーソドックスな相続税対策である賃貸経営も同時に検討することをおすすめします。

2-2. 成功条件②:投資額を極力抑える

現在の土地活用で成功するには「投資額を極力抑える」ことが必要です。
残念ながら、建築費については上昇傾向が続いており、建築費だけを見ると今は決して良い投資環境とはいえません。そのため、投資額を抑えるには、建築費の相見積もりを取ることの重要性がこれまでにも増して必要になっているといえます。つまり、信頼ができるより多くの企業からご自身にあった建築プランを提示してもらうことが必要です。

建築費の上昇は、単なる物価上昇だけではなく、輸入建築資材の高騰や業界の人手不足といった構造的な問題も絡んでいます。仮に輸入建築木材の問題(*ウッドショック)や土地価格の上昇が収まっても、建築費だけは独り歩きして上昇を続ける可能性はあると思っておいた方が良さそうです。
*ウッドショックとは、新型コロナウイルスをきっかけに世界的に発生した木材の需要増加によって輸入木材の価格が上がった現象のことです。

建築費に関しては上昇中であることから、工事費は、より多くの企業から提案をもらい、相見積もりを取りながら下げる方策を考えていくのが最も効果的です。要するに、建築プランの比較をしながら質をできるだけキープし、コストを抑えていくことが、この時代の土地活用を成功させる上でますます重要になっているのです。

2-3. 成功条件③:差別化する

しかし、今この時点で「賃貸住宅を建てるタイミングだ!」といわれても、やはり賃貸住宅の供給過剰は、誰でも気になるところだと思います。
では、この供給過剰に適切に立ち向かうために何が必要だとお考えでしょうか?

答えは「物件の差別化の必要性」です。
つまり、入居者様に選ばれる物件に仕立て上げられれば、供給過剰の中でも入居者を獲得する確率は上げられるはずです。

昨今は、共働き世帯をターゲットとしたIoT賃貸住宅が注目され始めています。
IoTとは「Internet of Things」の略であり、IoT住宅とはインターネット回線を通じてモノを繋いだ設備を充実させた住宅のことです。具体的には、エアコンや宅配管理、バスの給湯、インターフォン等を遠隔で操作できるものであり、共働き世帯の家事負担を軽減する設備を備えた住宅に需要が高まっています。

厚生労働省の「2020年(令和2年)度版 共働き世帯数の年次推移」によれば、2020年の共働き世帯は1,245万世帯で、2010年の995万世帯を境に10年間増加傾向にあるわけですが、共働き世帯をターゲットとしたIoT賃貸住宅はまだまだ供給戸数が少ない状況です。これは、一つの差別化戦略として参考にしてみて欲しいと思います。

まとめ

まとめ

以上、今回は、賃貸住宅の着工件数推移からみる土地活用の成功条件について考察をして解説をしました。

本編で述べた通り、2021年以降現在まで、賃貸住宅の着工件数は増加しています。
もし、賃貸住宅を建てるなら、低金利の状況下で、賃料も上昇したエリアでは今がチャンスと言えると思います。

しかし、賃貸住宅が供給過剰と言われ、少子高齢化が進んでいる昨今では、これまで以上に
・投資のタイミングを上手に計る。
・質を落とさずに建築費を抑える工夫がこれまで以上に重要。
・新しく着工させる物件の差別化戦略を練ることが重要。
ということが言えます。

着工件数の変化も一つの分析や判断材料にしていただき、引き続き、土地活用をご検討いただきたいと思います。

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この記事について

(記事企画)イエカレ編集部 (記事監修)竹内 英二
(竹内 英二プロフィール)
不動産鑑定事務所及び宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。
大手ディベロッパーで不動産開発に長く従事してきたことから土地活用に関する知見が豊富。
保有資格は不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。大阪大学出身。

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