【アパート経営】アパートやマンションの建築費について!大きく見誤らないための理屈を知っておこう【イエカレ】

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このコラムのポイント今回のコラムでは賃貸アパートやマンションの「建築費の概算額を知る方法」についてスピード解説します。

所有している土地へ賃貸アパートやマンションといった収益物件を建設して土地活用を検討したいと思った時「一体どのくらいの建築費が掛かるのか?を掴んでおきたい!」と思う方々は多いのではないでしょうか?

「条件次第では」ご所有の土地の敷地面積から建築費の概算建築費を知ることができる場合があります。

インターネット上には、この建築費概算に関する色々な記事が出ているのですが、実は、敷地面積から求める建築費の概算額では大きく見誤ってしまうこともあるため注意が必要です。

大きく見誤らないためには理屈を知っておくことが必要です。理屈を知っておくと敷地面積から概算額を求めることができる場合と、できない場合の違いも見えてくるようになります。それでは、早速、解説して参ります。

建築構造別の建設費坪単価の概算金額について

まず初めに、賃貸住宅における建築構造別の坪単価をご紹介します。現状を反映して示したものが下表となります。

構造建築費の坪単価相場
木造坪70〜100万円
軽量鉄骨造坪80〜110万円
重量鉄骨造坪90〜120万円
鉄筋コンクリート造坪100〜130万円

この表の坪単価は「延べ床面積」に対する坪単価を記載しています。

例えば、上から2番目の「軽量鉄骨造」で考えた場合「延べ床面積が100坪のアパート」なら、建築費は、およそ8,000万円から1憶1,000万円程度となります。

賃貸住宅の敷地面積と延べ床面積の関係

賃貸アパートやマンションの建築費の概算額を知るためには、まず、ご所有の土地の敷地面積から「建築可能な建物の延べ床面積」を割り出す必要があります。建物の規模は、一定の条件下であれば敷地面積から推測することが可能です。

敷地には「容積率」と呼ばれる建物規模を決める規制が存在します。容積率とは敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合のことを言います。この容積率は土地が所在する一定範囲のエリアごとに、行政から100%や200%といった数値で指定されていることを聞いたことがある方々もいるかもしれません。

例えば、容積率が100%の土地なら、敷地面積が60坪の場合「延べ床面積が60坪までの建物が建てられる」と言えます。容積率は、定義上では「敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合」を言うのですが、 実は、実際には延べ床面積と違う場合もあります。

知っておいて損がない点として、特に賃貸アパートやマンションといった共同住宅では「容積率の面積に算入されない床部分」が出るため、容積率の対象となる床面積が延べ床面積と食い違うということがよくあるという事なのです。この容積率の対象となる床面積は「容積対象床面積」とも呼ばれています。

共同住宅では、建物内にある壁に囲まれた共用の廊下や階段、エレベーターの昇降路は容積率の対象外の部分に当たります。また、地下階がある場合、地階の3分の1の部分も容積率の対象外となります。

このように、賃貸アパートやマンションといった共同住宅では、延べ床面積の中に容積率に算入されない部分があることから「延べ床面積が容積対象床面積よりも大きくなっている」ことが多いのです。正確には、容積率は敷地面積に対する建物の容積対象床面積の割合ということになります。

容積率は敷地面積と容積対象床面積の関係を表すことから、敷地面積からは容積対象床面積であれば推測できるものの、延べ床面積は推測できないことも多いと言えます。

ちょっと難しかったかもしれませんが、こうした理屈から、敷地面積から建築費の概算額を知ろうとしても、それができないことがよくあることを知っておいて頂きたかったのです。こうした理屈をまず知って頂いたところで、下記より本題に入ります。

「賃貸アパートの特徴!」「賃貸マンションの特徴!」を掴んでいただき、賃貸アパートの「建築費概算のシミュレーション方法」を順番に解説していきます。

賃貸アパートの特徴!

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まず、賃貸アパートからです。

賃貸アパートをご検討されている場合なら、ご所有の土地の敷地面積から建築費の概算額を把握できる可能性が高いと言えます。その理由は、一般的な賃貸アパートは、建物の構造が外廊下や外階段で構成されることが多く「延べ床面積内に容積率の不算入の部分がないことが多い」からです。簡単に言えば、アパートは「延べ床面積と容積対象床面積が同じことが多い」からと言い換えられます。

また、アパートは主に2階建てで検討されることが多いため、日影規制等で建物が削られるケースも少ないと言えます。日影規制とは、建物の北側の部分の日照時間を確保するための制限になります。

例えば、大きな分譲マンションで、上層階が階段状に削られて建てられているのを見たことがある方々も多いのではないでしょうか?あの階段状の部分なのですが、実は外観デザインではなく、日影規制により建物の北側に影を落とさないように設計された結果だったのです。

この日影規制のような建物形状を制限する規制にかかってしまうと、建物が容積率を最大限消化できないケースが出てしまうのですが、賃貸アパートは2階建てといった低層であることが一般的なので、日影規制等によって建物が階段状に削られることまずないことから、容積率を最大限消化できることが多いわけです。

そして、アパートを建てたいと検討される土地オーナーの皆様の場合、土地を第一種低層住居専用地域と呼ばれる用途地域内で所有をされている方々も多いかと思います。この第一種低層住居専用地域は、容積率が100%または150%で指定されていることが多いので、例えば、80坪の整形な土地で容積率が100%で指定されていた場合は、アパートの延べ床面積も容積対象床面積も80坪になることが推測できます。

冒頭でご紹介した表で、木造建築で、建築費の坪単価が90万円。延べ床面積が80坪なら、建築費の概算額は「およそ7,200万円だ」と試算できます。

ただ、いくら概算建築費が把握しやすい賃貸アパートとはいえ、敷地面積が300坪くらいの広い土地にゆったりとした駐車場を整備して、建物をポツンと建てることが想定されたケースでは、さすがに敷地面積から延べ床面積を推測することは難しくなってしまうでしょう。こうした広い敷地を所有されていて、そこにアパートを建てる場合では容積率が余ってしまうことがほとんどだからです。敷地面積が300坪で延べ床面積が100坪しかないといったケースも実際にあったりもします。

容積率を余らせてアパート建築を検討するケースでは、敷地面積から建築費の概算額を知ることは難しくなってしまうので、その場合は専門家の力を借りて概算建築費を計算してもらう以外方法がないことを知っておいて頂ければと思います。

賃貸マンションの特徴!

次は、賃貸マンションです。

上述しましたが、賃貸マンションは、分譲マンション同様、共用廊下や共用階段、エレベーター等があることから、延べ床面積と容積対象床面積が異なることが一般的になります。これは設計にもよるのですが、具体的には、延べ床面積は容積対象床面積の1.1~1.3倍程度となることが多いです。

例えば、敷地面積が80坪で容積率が400%の土地であれば、容積対象床面積は最大で320坪です。 延べ床面積が容積対象床面積の1.1~1.3倍だとすると、延べ床面積は352~416坪となる可能性があります。仮に、建築費の坪単価が120万円だった場合、延べ床面積から概算される建築費は、4億2,240万円~4億9,920万円となります。

「大雑把でも分かれば良い」ということでしたら、これでもご参考にして頂けると思いますが、この計算では、あまりにも振れ幅が大きいと言えます。

また、これも上述しましたが、賃貸マンションを建設する場合は「日影規制」や「高さ制限」といった規制にかかる可能性もありますから、必ずしも容積率を全て消化できるとは限りません。容積率を全て消化できなければ、敷地面積から推測される建物規模はもっと小さくなることになります。

こう考えると、厳密には、賃貸マンションの場合、敷地面積から建築費の概算額を出して、それを収益性の検討用などに使うことは、あまりお勧めできる方法ではないかもしれません。

建築費シミュレーション

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賃貸アパートと賃貸マンションに関する特徴も掴んで頂いたところで、以下の条件で、賃貸アパート建築費シミュレーションの例を挙げてみました。ご参照ください。

(シミュレーションの条件)

    建物の種類:賃貸アパート
    敷地面積:60坪
    指定容積率:100%
    建築費坪単価:90万円
    容積率:全て消化できるものとする

(概算建築費は以下となります)

    延べ床面積 = 敷地面積 × 容積率
          = 60坪 × 100%
          = 60坪

    概算建築費 = 建築費坪単価 × 延べ床面積
          = 90万円/坪 × 60坪
          = 5,400万円

この記事のまとめ

以上、今回は、賃貸アパートや賃貸マンションの経営を検討するにあたって、建築費の概算額を知る方法について解説しましたが、如何だったでしょうか?

まとめとしては、概算建築費は、比較的小さめ土地で建てる賃貸アパートなら、敷地面積からある程度推測することは可能です。しかし、賃貸マンションの場合は、頭のなかで「何となくでも数値を掴んでおきたい!」といった本当に参考程度なら良いのですが、敷地面積から概算額を試算する方法では、試算額の振れ幅が大きくなるため、収支計算をする際は狂いが生じる可能性が大きいと言うことなのです。

賃貸住宅を建てて土地活用を実際に検討する際は、大雑把な概算費用で行うよりも、できる限り正確な金額を割り出した上で収支計画を考える方がはるかに重要になってきますので、その場合は、設計事務所の専門家やハウスメーカー・工務店などからの提案を受けるようにして頂ければと思います。その方がより正確に分かりますし、なんと言っても間違いがありません。

この記事もご参考にして頂き、是非、引き続き、賃貸アパートや賃貸マンションの土地活用をご検討を続けて頂ければ幸いです。

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この記事について

(記事企画)イエカレ編集部 (記事監修)竹内 英二

(竹内 英二プロフィール)
不動産鑑定事務所及び宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。
大手ディベロッパーで不動産開発に長く従事してきたことから主に土地活用に関する知見が豊富。
保有資格は不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。大阪大学出身。

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