【アパート・マンション経営】大家さんが知っておきたい防音対策のアイディア【イエカレ】


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このコラムのポイントここ数年一気にリモートワークが普及したことで、防音対策がなされていない賃貸物件では新たな騒音問題が出てくるようになったと言われています。

例えば「日中、隣の部屋から仕事の話し声が長時間漏れて、それがしょっちゅうなので本当に耳障り」という内容です。最悪なのは、そうした理由から入居者離れを発生させているケースが出始めていることです。

従来、賃貸住宅に限らず、分譲マンションのような集合住宅における「防音対策」は、外部からの騒音が大きい商業エリアや幹線道路沿いにある物件、または楽器演奏可の物件等、一部の物件において求められていました。

しかし、リモートワークの例からも昨今では閑静な住宅地内にある一般的な賃貸物件でも求められるようになってしまいました。では、賃貸オーナー様を悩ませるこの騒音問題について、既存の賃貸物件で出来る防音対策はあるのでしょうか。

この記事では「防音対策の根本」と「既存の賃貸物件の防音対策」について解説してみます。

防音対策は、実は「空室対策」にもなっている!?

この前段では、防音対策をすることの意味とそのメリットからお伝えしたいと思います。

従来から「防音対策がされている賃貸物件には、一定の空室対策効果も備わっている」と言われています。

上述した通り、交通量の多い幹線道路沿いや、中心市街地の中にある賃貸物件では、物件の建築時にしっかりとした防音対策を講じていなかったばかりに、外からの大きな騒音を防ぎ切れず、それがネックとなりました。「せっかく入居をしてくれた入居者がしばらくすると退去した」「騒音を嫌がられて入居者が決まりにくい」などといったデメリットが見受けられがちでした。

では、そもそも「騒音」とはどんなものを言うのでしょうか?

一般的に、街のなかで出される騒音のように「特定のもの以外から出されて、人間の耳に自然に聞こえてしまう騒音」のことを「暗騒音(バックグラウンドノイズ)」と呼びますが、これが賃貸オーナー様の経営上で、非常に厄介なものになるわけです。

例えば、幹線道路沿いに建つ賃貸物件の話しです。入居希望者が内見にやって来た際、部屋の外から入ってくる暗騒音に気付き、急に窓を開けたり閉めたりして騒音状態を確かめる人がいます。

人間は心理的に「これは一時的な騒音だから」と前もって理解をしていれば「騒音がやむまで我慢しよう!」と考えますが、反対に終わりが見えない状態で絶えず騒音が耳に入ってくると次第にそれがストレスへ変わります。ストレスがさらに酷くなるとノイローゼや不眠症を引き起こします。

騒音の種類は関係ありません。外から入る「車のロードノイズ」や「振動を伴った大型トラックの音」だけでなく「人の話し声や騒ぎ声」「ペットの鳴き声」なども同じです。

そうした騒音を毎日毎日聞かされながら生活する側は溜まったものではないでしょう。騒音を我慢をするために常に耳栓を付けて生活をするわけにもいきません。

こうしたことから、騒音問題は賃貸住宅の入居者にとっても非常にセンシティブで、実は関心の高い問題だと気付かせてくれます。

逆に、都市部の暗騒音が多いエリアで当初からしっかりとした防音対策を施して建てた賃貸物件は、非常に入居者が決まりやすい傾向があると言われています。

閑静な場所の賃貸住宅での新たな騒音問題

冒頭での述べた通り、最近では閑静な住宅地内にあるアパートでも、新たな騒音問題がクローズアップされています。その大きな原因は「リモートワークの普及」です。

特に「ワンルーム」や「壁や床の薄い賃貸物件」で、パソコンや電子機器を使ったリモートワークが行われると「隣や上下の部屋からしょっちゅうオンライン会議らしき声が聞こえてきて、それが毎日だとハッキリ言って迷惑」または逆に「仕事の電話やオンライン会議中は、声は落としているつもりだけど、仕事中の自分の声が隣の部屋に漏れてしまっているのでは?と考えると申し訳なく感じる」といった入居者同士で軋轢が生じます。オンライン会議や電話で仕事の話しをする側も、話の内容が「会社や取引先との機密情報」に及ぶと更にやりにくさを感じてしまうでしょう。

今までなら「隣の部屋のテレビの音や音楽を聴いている音がうるさい!」といった騒音問題が定番のクレーム内容でしたが、加えて現在は、リモートワークの話し声の問題が原因で、それをやっていた入居者、それを聞かされていた入居者双方が退去してしまった例もあります。

リモートワークの他にも、大学生や専門学校生が住むワンルーム物件では「リモートオンライン授業」というものも一般化しました。

新型コロナが一応の落ち着きを見せ始めた今、果たして「やっとこれでリモートワークやリモート授業からもおさらばできる!」と言い切れるでしょうか?いいえ、今後も存続されていく可能性は十分高いと思われます。

こうして考えると、閑静な住宅街の賃貸オーナー様のなかで、最近になってこうした騒音問題でもクレームを付けられたことがある方々にとっては、新型コロナ問題が残していった厄介な副産物と言わざるを得ません。しかし、

今後は、閑静な住宅街といえども、防音対策をしっかり行い賃貸住宅を建てることがその後の永続的な空室対策効果を得られる点でメリットになります。

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残念ながら、建築後にできる防音対策は限定的になってしまう!?

次に、この章では、防音対策の根本ともいえる基本項目と、既存の賃貸物件でもその項目を活かした防音対策ができるのか?についてお伝えしたいと思います。

賃貸物件に限らず住宅における防音対策は、本来「新築竣工前の設計段階」で調査や検討をするもので、その結果、騒音に対処できる工法、建材や建具などを決めてから物件の建築が進められるわけです。そうすることで、物件トータルとして防音機能が備わった建物が完成するわけです。

また防音に関することで物件の構造を言えば、例えば「木造」か「鉄筋コンクリート造」かでも防音・遮音性能はもちろん変わってきます。音は、単位面積当たりの重量が大きいほど透過損失が多くなる特質を持っています。そのため、木造よりも物質密度が細かく、重たい質量を持つ鉄筋コンクリート造の方が防音・遮音性能は一般的に高いわけです。

しかし、木造アパートで鉄筋コンクリート造と同レベルの遮音性能を追い求めてしまうとリフォーム程度では難しく、極端な話し、建て替えでもしない限り、根本的な騒音対策は難しいと言えます。

そこで、既存物件でもできる防音対策についての話しになっていくのですが、まず、パッと頭に思い浮かぶ防音対策の一つ目は「二重サッシ」です。

外からの暗騒音は建物の隙間から入り込んでくる特質があるため、騒音が部屋に入ってくる面の窓の開口部を二重サッシに変えると遮音効果が段違いに上がるという考えです。

少々余談ですが、換気扇ひとつとっても防音対策を意識した建物設計では「音が入り込みにくいタイプの換気扇」を取り付けることが適切だったりもします。

では、この「窓の開口部を二重サッシに変える」といったリフォームは「既存の物件でも可能なの?」と聞かれれば「それは可能かもしれない」という答えになってしまいます。

このリフォームを行う場合、その副作用としてかなり大掛かりな工事が伴うことになります。

「窓を取り替えるだけなのに大掛かりな工事になるのですか!?」と思われる方がいらっしゃるかもしれないのですが、窓サッシを付け替えるためだけに、その窓面の周囲の壁も一緒に取り壊さなければいけない大工事になる可能性があります。この場合、まず間違いなく賃貸オーナー様にとって費用対効果に見合わないといえるでしょう。

では「床または天井に関してどうか?」ということが思い浮かびます。実は、スラブ(鉄筋コンクリート造の床版)を厚くできれば、振動を伴う重い衝撃音に対しては効果は低いかもしれませんが、軽い衝撃音に対しては防音効果は発揮されます。

ただ、これも現在、賃貸経営中の既存物件で、床スラブを厚くするようなリフォームができるか?と言えば答えはNoでしょう。入居者へ不便さを強いる負担も出てしまいますし、費用対効果の面でも全く非現実的だと分かります。

因みに、重い衝撃音に対する遮音効果を上げるには、スラブと床を切り離した「二重床の浮き床工法」というものを選択することが一般的です。この床を二重床構造にすることも、床の高さが変わる工事が必要となることから、建築後からそれを施すことは本当に難しいといえます。

パッと頭にひらめいた「窓」「床、天井」でのリフォームでしたが、もちろん、建物の防音対策としては確実で効果的な対策なのですが、既存物件で後付けのリフォーム工事の形でそれが実現できるかと言えば「できないことはないかもしれないが、かなり非現実的」だと分かります。

ですから、本当に頭が痛くなる話しなのですが、既存物件で完全な防音対策を行うのは難しく本当に残念ではあるのですが、こうした本格的な防音対策を建築後に講じることは難しいと言えます。


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今からでもできる防音対策

しかし、これで終わってしまっては「この記事は一体何だったの?」という話になってしまいます。

既存物件であっても、ある程度の防音対策が施せるテクニックはないのでしょうか?

ここでもう一つ、空室対策でお困りだった賃貸オーナー様が「ペット可物件」に入居者条件を変えたケースの話しを紹介します。

何も防音対策を講じずに「ペット可物件」としてしまったために、入居者が飼い始めたよく鳴く小型犬のペットの鳴き声がトラブルとなり、隣戸の入居者が退去してしまったというケースです。

このように「物件の条件を変えた」ために賃貸オーナー様自らが新たに騒音問題を勃発させてしまったケースもあります。空室を埋めることだけで精一杯となり防音対策の必要性まで頭が回らなかった賃貸オーナー様が、入居者からはそれを求められた例でした。

こうした例もございますので、ここでは、既存賃貸住宅でも今からでもできる防音対策テクニックを紹介します。どれも「言われてみればそんなこと!?」と思うことかもしれませんがバカにできない内容です。ご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。

窓際は「防音カーテン」を採用する!

簡単にできる対策になりますが防音グッズを使うという方法が一つ目です。

防音グッズとしてすぐに思い浮かぶものに「防音カーテン」があります。 窓からの騒音が気になる物件の場合におすすめできるグッズになります。防音と同時に断熱効果も期待できます。

賃貸物件では、貸主側であらかじめこの防音カーテンを用意しておくと、新しい入居者の入居時費用の軽減にもつながることから喜ばれることが多いです。

入居者募集の広告やチラシに「防音カーテン有り」と記載すると、意外に入居希望者に興味を持ってもらえるアピールポイントにもなります。

壁は「吸音材+防音シート」で被う!

壁は本来であれば二重壁にして、内部にグラスウール等の繊維系吸音材を入れると防音対策としてはベターなのですが、既存物件で二重壁を施工するのは現実的には難しいでしょう。

そのため、壁からの騒音に対しては「壁に吸音材を張りその上から更に防音シートを張る」といった対策が有効です。各部屋へその施工をすればかなりの効果が出るはずです。

ここでの注意点は防音シートだけを張っても防音効果は薄いので「必ず吸音材をセットで使う」ことがポイントです。

「音配慮ドア」へ取り換える!

また、建具の中には「音配慮ドア」と呼ばれるものもあります。防音性の高い建具にすることで、ある程度の防音効果を期待することができます。

お手持ちのパソコンやスマートフォンからGoogle検索などで「音配慮ドア 効果」などと入力して検索をすると、実物写真や口コミがすぐに確認できますので是非チェックしてみてください。

3-4.床に「防音カーペット」を敷く

床に関しては「仕上材を防音性の高いカーペットにする」というのは対策の一つになってきます。

カーペットであっても軽い衝撃音に対しては防音対策としてはかなり有効です。物によっては床スラブを厚くするのと類似の防音効果を得ることだってできます。 防音カーテン同様「防音カーペット」と呼ばれるものも多数出ていますので、ご存知がなかったら、こちらも是非パソコンやスマートフォンから検索チェックをしてみてください。

また、カーペットがイマイチだと思った場合は、壁同様、吸音材+防音シートを使った対策も考えられます。仕上材として木目調のクッションフロア等も組み合わせれば、フローリング感も演出することができるでしょう。

この記事のまとめ

以上、既存物件の防音対策について解説してきました。 近年は、リモートワークやリモート授業の普及により、閑静な住宅地内の賃貸物件においても「防音性能の高い物件」が求められるようになってしまいました。

既存物件では工事や施工をともなう抜本的な防音対策は、やろうと思えば可能かもしれませんが、費用の面から言ってもかなり難しいことが考えられるため、効果は限定的であることを踏まえながら、後付けでできる防音対策を考えていくスタンスが適切です。

既存物件の防音対策は、防音グッズや吸音材も上手に活用しながら実行していくことも効果的です。既存の賃貸物件の防音対策で頭を痛めていらっしゃる賃貸オーナー様がいらっしゃいましたら、空室対策として、ぜひこの記事を参考にして頂けると幸いです。

▼イエカレでは土地活用や不動産管理に関する記事も多数掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください。

土地活用に関する記事:https://plus-search.com/chintai/archives.php
賃貸管理に関する記事:https://plus-search.com/property_management/archives.php
家の貸し出しに関する記事:https://plus-search.com/relocation/archives.php
不動産売却に関する記事:https://plus-search.com/fudousanbaikyaku/archives.php

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この記事について

(記事企画)イエカレ編集部 (記事監修)竹内 英二
(竹内 英二プロフィール)
不動産鑑定事務所及び宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。
大手ディベロッパーで不動産開発に長く従事してきたことから土地活用に関する知見が豊富。
保有資格は不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。大阪大学出身。

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