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タワマン節税に遂に歯止め!知っておきたい適切な相続税対策とは?
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タワーマンションによるマンション節税とは?
タワマン節税とは、タワーマンションの高層階を保有することによる相続税対策のことで、実勢価格と相続税評価額の乖離に着目した節税対策を言います。今回、財務省が公表した新たな評価方法により、遂にその節税対策にメスが入ることになりました。
一般的に、マンションの時価(実勢価格)は、一般的に階数が高いほど高くなるという側面があります。上層階ほど時価が高くなる理由は、階数が高いほど眺望や日照に優れるという付加価値が付くためです。例えば、タワーマンションの1階の70平米の部屋よりも、30階の70平米の部屋の方が購入額も売却したときの価格も高くなります。
しかし、その一方で、マンションの建物の相続税評価額は階数による差がありませんでした。
マンションの建物の相続税評価額は、固定資産税評価額を用います。各部屋の固定資産税評価額は、一棟の建物評価額を単純に専有面積で案分したものです。同じタワーマンションの建物の固定資産税評価額は、1階の70平米の部屋でも30階の70平米の部屋でも同じ額になるのです。
つまり、このタワーマンションの例では、時価は階数が高くなるほど高くなるのに、相続税評価額では階数が高くなっても高くならないという乖離があるわけです。タワーマンションのように超高層階が存在するマンションでは、上層階の部屋は時価と相続税評価額との間に大きなギャップが生じているのです。これは、現金をタワーマンションの上層階の部屋に変えるだけで、大きく資産を圧縮することができるため、タワーマンションの高層階の部屋を保有することは相続税対策となってきました。
今までの財産評価方法
それでは、財産評価方法の観点からもう少し掘り下げて解説します。
言葉で書くと、なかなかお伝えしにくいのですが、なるべく分かりやすく解説します。
マンションも一戸建てやアパートと同じく土地と建物で構成されていますが、相続税評価額は「土地」と「建物」のそれぞれを計算して求めます。現在の財産評価方法では、
- 土地:「相続税路線価」に基づいて計算された評価額である。
- 建物:「固定資産税評価額」が用いられている。
このようになっています。
マンションの土地は、相続税路線価を用いて敷地全体の土地価格を求め、その全体価格を専有面積案分したものが土地の相続税評価額になります。
一方、マンションの建物は、マンション一棟全体の建物評価額を専有面積案分したものが建物の相続税評価額となります。いずれも全体の評価額を専有面積案分しているだけであり、階数による差は加味されていない点が大きな特徴でした。
「タワマン節税の何を問題にされているか?」ということですが、ここに興味深い資料があります。後程、是非ご覧頂きたいのですが、国税庁の資料「相続税評価額と市場価格の乖離の実態」(https://www.nta.go.jp/about/council/idenshi/20230601/shiryo.pdf)によりますと、現状の評価方法では市場価格との乖離率(市場価格÷評価額)は「マンションでは2.34倍」、「戸建てでは1.66倍」となると公表されています。つまり、相続税評価額はマンションが時価の約43%(=1÷2.34)、戸建てが時価の約60%(=1÷1.66)となっており、マンションの方が時価との乖離幅が大きい傾向があるとされています。これが、タワーマンションの超高層階の物件ともなれば「言わずもがな」となるわけです。
こうしたことから、新しい相続税算定ルールでは、少なくともマンションの相続税評価額も時価の6割程度とし、マンションと戸建てとの差異をなくすことが目論まれているのです。
新たな相続税算定ルールはどうなる!?
では、気になる新たな相続税算定ルールはどのようなものに変わるのでしょうか?
本稿の執筆時点(2023年7月1日)における、新しい相続税の算定ルールはまだ検討段階となっていますが、今現在、把握ができている範囲で解説しましょう。
前章で紹介した国税庁の資料では、いくつかの評価方法について検討過程が示されています。検討されている評価方法は、大きく分けて
- 「標準戸から比準して評価する」方法
- 「統計的手法を用いて評価する」方法
の2種類が示されています。
結論を先に申し上げますと、前者の「標準戸から比準して評価する方法」は、評価の手間とそれに掛かるコストが大きくなりそうとのことから検討が難しいとされています。そのため、現在有力視されている方法が、後者の「統計的手法を用いて評価する方法」です。
統計的手法を用いて評価する方法では、さらに以下の2つのアプローチが検討されています。
- 現行の相続税評価額を前提とせず、価格形成要因(説明変数)から直接的にマンションの市場価格を予測して評価する方法
- 現行の相続税評価額を前提とした上で、市場価格との乖離要因(説明変数)から乖離率を予測し、その乖離率を現行の相続税評価額に乗じて評価する方法
以上2つです。
そして、上記のうち、執行される可能性の高い方法として考えらるのが、(2)の「現行の相続税評価額を前提とした方法」です。
市場価格との乖離要因(説明変数)としては「築年数」「総階数」「所在階」「敷地持分狭小度」の4つの項目がピックアップされています。
この4つの項目のうちの一つである「敷地持分狭小度」といのが、あまり分かりやすいとは言えない指標なのですが、補足しますと、上述した通り、マンションの土地は「専有面積案分で評価がされる」と述べました。一般的に20階建てくらいのタワーマンションだと「一棟あたり平均300戸」と言われますが、もっと規模が大きなタワーマンションになると「一棟当たり1,000戸」を超えるマンションも普通に存在します。1戸あたりの土地の面積は、一般的に戸数の多いタワーマンションになればなるほどより細分化されてしまいます。つまり、1戸あたりの土地が計算上は狭小になると、土地価格が相続税評価額に反映されにくくなってしまい、時価と評価額との乖離を生む原因となるわけです。そのため、タワーマンション内の戸数が多いことで生じる狭小度を是正するため「敷地持分狭小度」という指数が検討されているというわけです。
適切な相続税対策とは
以上、ここまでご覧を頂いて、皆さまはどうお感じになられたでしょうか?
「マンションの建物の相続税評価額は階数による差がないというこれまでの穴があった」と言われればその通りなのでしょうが、ここで不動産における適切な相続税対策ということを考えてみた場合、このタワマン節税の存在は、以前より国税庁が問題視してきたもので、不動産専門家の間では「いつかメスが入るだろう!」と言われていました。そのため、まっとうな専門家筋では、タワマン節税についてタワーマンション購入者へ助言する人は減っていたこともあり、近年ではタワマン節税が下火となっていたことは確かです。恐らく国税庁でもかなり以前から入念な準備と検討をしてきたものと思われますが、いよいよ是正を公表できる段階になったようです。
上述しましたが、この新しい制度は2024年1月から実行されます。近年、相続税対策については、国は厳格化する方向にあります。昨年2022年4月には行き過ぎた相続税対策を否認する最高裁判例も出されました。当該最高裁判例に続き、タワマン節税への歯止め論も出てきたことから、今後はあからさまな相続税対策はますます難しくなっていくでしょう。
こうして考えると、時代は廻り回ってくるのだと改めて考えさせられます。今後「適切な相続税対策」として考えられるのは、なるべく早く(若いうち)から始める土地活用といった正統派なものに回帰するでしょう。つまり「個人資産の運用としての側面が色濃いもの」であれば、世間的に見てもあからさまな相続税対策には見えにくくなることが理由です。
この記事のまとめ
以上、今回は「タワマン節税についに歯止め」というテーマで解説をしてきました。
繰り返しになりますが、かねてよりタワマン節税にはメスが入ると考えられていましたが、いよいよ是正措置が具体化し始めました。
個人資産を不動産で運用するにあたって、世間から目を付けられてしまうような「あからさまな相続税対策」を回避するには、やはり、早くから始める正統派の土地活用が適切ではないでしょうか。相続税対策をお考えの方は、従来からあるオーソドックスな土地活用を検討した方が中長期的に見ても大怪我がないと言えないでしょうか?
この記事について
(記事企画)イエカレ編集部 (記事監修)竹内 英二
不動産鑑定事務所及び宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。
大手ディベロッパーで不動産開発に長く従事してきたことから土地活用に関する知見が豊富。
保有資格は不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。大阪大学出身。
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