住宅ローンが残っている家を賃貸にするには?許可・税金・控除の正しい手続きを解説

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このコラムのポイント

転勤や海外赴任が決まり、持ち家を賃貸で貸し出そうとお考えの方へ。「ローンが残っている状態で賃貸に出すには、金融機関の許可が必要」とご存じでしたか?

ローンが残っている自宅を賃貸物件として貸し出す場合、金融機関の許可を得ないと大変なことになります。

本記事では、金融機関の許可を得る理由から、複雑な税務・住宅ローン控除を損なく継続するための条件、そして安心して任せられる管理会社の選び方まで、あなたがリスクを回避し、安全に賃貸化するための具体的な手順を専門家が徹底的に解説します。

目次

1.住宅ローンが残っている場合の注意点

住宅ローン残債が残る自宅を賃貸に出すことは、金融機関の許可なく進めると重大な契約違反にあたります。多くの住宅ローン契約には「自ら居住することを前提とする特約」(注1)が存在するため、転勤などで自宅を離れる際には、まずこの最大のリスクを理解し、損しないための正しい手順を知る必要があります。この章では、無断賃貸がもたらす危険性と、銀行承諾を得るための基本的な考え方をお伝えします。

1-1.なぜ金融機関の許可が必要なのか(無断賃貸NGの理由)

住宅ローンが残っている家を賃貸に出すには、銀行の承諾が必須になります。これは、居住用ローンには契約者本人の居住を前提とした金利優遇があり、投資用ローンより低金利のためです。許可が必要な理由は主に以下の3点です。

  • 契約違反による一括返済のリスク:「自己居住」特約に反する無断賃貸は違反となり、一括返済を求められる可能性があります。
  • 低金利の優遇措置の喪失:融資目的の変更により優遇が取り消される可能性があります。
  • 抵当権の実行リスク:最悪のケースでは競売に至るリスクが生じます。

1-2.許可申請の流れと連絡時のポイント(例文付き)

金融機関への許可申請は、上記リスクを回避するため最優先で行います。申請時期:転勤辞令などで賃貸予定が確定したら速やかに相談。伝え方:一時的な転勤であり、将来的に自宅へ戻る意思があることを明確に伝えます。

項目 具体的な伝え方のポイント
状況の説明 会社の辞令で、〇年〇月〇日から〇年間限定で〇〇へ転勤することが決まりました
戻る意思 転勤期間終了後は、必ず自宅に戻り再度居住する意思があります
ローン支払い 転勤期間中も、ローンの支払いを滞りなく継続する資金計画を立てています
賃貸化の理由 空き家期間中の管理やセキュリティ上の懸念から、一時的に賃貸に出したいと考えています

1-3.許可書類・手続きの流れ

  • 転勤辞令書や海外赴任命令書など、一時的な転居を証明する書類(注3)を準備。
  • 金融機関所定の「賃貸承諾依頼書」に必要事項を記入。
  • 銀行の審査にて返済実績や特約の適用可否を確認。
  • 審査通過後、「賃貸承諾書」等が発行。

都市銀行や地銀では、客観的理由(転勤辞令等)があれば承諾が得られるケースが多い傾向です。

1-4.分譲マンションの場合の管理組合への届出

分譲マンションでは、金融機関の許可とは別に管理組合への届出が必要です。管理規約を確認し、届出義務・手順に従いましょう。

届出先 必要書類 タイミング
管理組合または管理会社 賃貸借契約書(写)、入居者連絡先、届出書 賃貸借契約締結後、入居前

1-5.許可を得る前に確認したい3つのチェック項目

分類 確認すべき項目 理由/重要なポイント
金融 住宅ローン契約書の特約条項 無断賃貸時の違反内容とペナルティ(一括返済など)
税務 住宅ローン控除の継続条件 家族の居住や住民票の扱いで控除停止リスク
管理 分譲マンションの管理規約 届出義務の有無や違反時の罰則規定

許可申請の必要書類と転勤期間の明確化が、安心への第一歩です。

2.家を貸す前に準備すべきこと(手続き・費用・保険)

許可取得後は、原状回復・保険・管理体制を整え、トラブルを未然に防ぎます。

2-1.原状回復・火災保険・賃貸管理の事前整備

原状回復の範囲検討と実施

入居前の現状記録で基準を明確化。軽微な傷などは借主義務外だが、クリーニング等の最小限の修繕で募集力を高めます。

火災保険の見直し

居住用から賃貸用火災保険へ切替必須。未切替は保険金不払の恐れ。

賃貸管理の検討

遠隔・海外からの自主管理は困難。募集〜集金〜退去まで一括対応できる管理会社への委託が安心です。

3.税金と確定申告・住宅ローン控除の扱い

家賃収入の課税と控除継続条件を理解し、ミスなく申告しましょう。

3-1.家賃収入の課税と必要書類(確定申告の手順)

家賃収入:不動産所得として申告が必要。

手順:

  • 家賃収入 − 必要経費 = 不動産所得を算出。
  • 他の所得と合算し、所得税・住民税を計算。

経費例:ローン利息(元本除く)/固定資産税・都市計画税/火災・地震保険料/管理手数料/建物減価償却費。

必要書類:源泉徴収票、賃貸借契約書、経費領収書類、住宅ローン残高証明書(控除継続時)。

3-2.転勤中の住宅ローン控除が継続できる条件

項目 控除継続の可否 具体的な条件
単身赴任 継続可能 家族が自宅に居住し、住民票を自宅に残す。
家族帯同 原則継続不可 家族全員が住民票を転勤先へ移動し、自宅が空き家または賃貸。
一時的な賃貸 継続可能(特例) 非居住前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を税務署へ提出し、将来戻る意思がある。

控除継続には辞令等の証明と、住民票の扱いが重要です。

3-3.再入居後の再適用手続きと控除が使えないケース

再適用:再居住した年の確定申告で「再居住の届出書」等を添付し、残存期間の控除を再開。

使えないケース:

  • 転勤期間中の自宅売却
  • 賃貸が長期化し戻る意思なしと判断された場合
  • 自己都合で非居住者となった場合

3-4.海外赴任・非居住者扱い時の税務と代理申告

納税管理人の届出:非居住者となる場合、確定申告・納税手続きを代行する納税管理人を選任し、非居住前までに届出。

提出先:納税管理人の所在地を管轄する税務署。

4.管理会社を選ぶときのポイント

許可・税務・入居者対応を横断支援できる会社の選定が成功の鍵です。

4-1.住宅ローン中でも対応できる管理会社の特徴

  • 金融機関許可対応の実績:承諾取得の資料作成や折衝ノウハウ。
  • 定期借家契約の実績:転勤期間に合わせた確実な明け渡し運用。
  • 税務知識:課税・非居住者・納税管理人の基礎知識。

4-2.良い管理会社の3条件

  • 金融機関の許可手続きに協力的
  • 定期借家契約の実績が豊富
  • 税務(控除・非居住者)に関する基礎知識を保有

4-3.実績・手数料・報告体制・トラブル対応の比較チェックリスト

比較ポイント 判断基準 賃貸経営への影響
実績 類似物件(同エリア・同築年数・同価格帯)の募集実績と家賃相場 適正な賃料設定と早期入居に直結します。
手数料 広告費や管理方式における手数料の割合 賃貸収入の手取り額に直結します。比較が必須です。
報告体制 家賃の入金報告や物件状況の報告体制と頻度(月次報告など) 遠隔地からでも任せて安心の信頼につながります。
トラブル対応 修繕・クレーム対応の24時間・365日体制の有無 トラブル防止とオーナーの手間軽減に直結します。

4-4.無料査定・一括相談を活用する方法

許可前でも査定で賃料相場と貸出条件を把握し、銀行承諾の根拠資料に。複数社比較で最適なパートナーを選びましょう。

5.ケース別で見る注意点(単身赴任・家族帯同・海外赴任)

単身赴任・家族帯同・海外赴任で税務や控除の扱いが異なります。違いを把握して損失を避けましょう。

5-1.単身赴任と家族帯同時の扱いの違い

項目 単身赴任時の扱い 家族帯同時の扱い
家族居住 家族(配偶者や子ども)が自宅に引き続き居住 家族全員が転勤先へ住民票を移動し、自宅は非居住者扱い
住民票 家族の住民票は自宅に残すことが可能 家族全員の住民票を転勤先へ移す
控除継続 継続可能(家族が住んでいるため) 原則継続不可(一時的な賃貸特例申請が必要)

単身赴任は家族居住と住民票維持で控除継続が可能。家族帯同は特例手続きがなければ控除停止となります。

5-2.海外赴任時に必要な手続きと非居住者の論点

税務上の届出:非居住者となる場合、納税管理人の選任届出書の提出が必要です。

管理上の注意:管理会社との連絡手段(時差・通信)と報告体制を明確化。家賃受取口座や緊急修繕費支出の代理権限を契約で定めておくと安心です。

6.よくある質問(FAQ)

6-1.Q1. 住宅ローン中でも家を貸せますか?

A1:条件付きで可能です。多くの住宅ローン契約には「自ら居住」特約があり、無断賃貸は契約違反です。転勤などやむを得ない理由がある場合は、事前に金融機関の許可を得てください。相談時は一時的転居と将来戻る意思を明確に示すことが重要です。

6-2.Q2. 短期の1年間でも貸すことは可能ですか?

A2:定期借家契約で対応可能です。1〜2年など期間を定めれば、満了で確実に明け渡しができます。

6-3.Q3. 親族に貸す場合でも金融機関の許可は必要ですか?

A3:家賃等の授受があれば原則必要です。相手が親族か否かではなく、「自己居住でない」ことが特約の対象です。

6-4.Q4. 金融機関に断られたらどうすべきですか?

A4:賃貸管理会社へ相談し、賃料相場や管理方式を再検討。それでも難しければ投資用ローンへの借換えも選択肢ですが、金利上昇に注意して慎重に比較してください。

6-5.Q5. 査定や相談はいつすべきですか?

A5:許可申請前の査定が理想です。家賃相場と貸出条件の裏付けを得てから銀行へ相談すると、承諾がスムーズです。

7.まとめ:リスクを回避して安心して貸すための3ステップ

①金融機関の承諾取得、②税務・控除の適正手続き、③信頼できる管理会社の選定――この3ステップで、住宅ローンが残っていても安心して自宅を資産活用できます。できる準備から着実に進めましょう。

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