【脱炭素時代のアパート経営】ZEH賃貸住宅|貸主と借主のメリットとデメリットをお伝えします【イエカレ】


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このコラムのポイント

この記事では、「ZEH(ゼッチ)賃貸住宅」について解説していきます。

世界中で脱炭素時代が叫ばれる現在、日本では2025年4月以降、省エネ基準適合住宅の義務化が決まっており、新たに建てられる賃貸住宅も例外ではありません。

現在、国内にはZEHや低炭素住宅、省エネ基準適合住宅といった様々な名称の省エネ住宅が存在します。特にZEHに関しては、近年、建設各社の積極的なプロモーションもあり、認知度が徐々に高まり始めた結果、一般住宅のみならず、集合住宅での着工も見られるようになってきました。

ZEHは集合住宅を新築する場合でも補助金が出るため、土地活用でも取り入れることができます。入居者囲い込みと入居率安定化を考えて、こうしたZEH賃貸住宅に関して興味を持たれている方も多いと思います。

これから土地活用を行う方は、最新のアパート建築・経営プランを集めて検討をしていくことが望ましいと言えます。早速、一緒に見ていきましょう!


ZEH(ゼッチ)とはなんでしょうか?

まずはじめに「ZEH」とはなにかについてご説明します。

ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」を略した用語で、一般的に「ゼッチ」と発音されている最近のエネルギー関連用語です。ZEH仕様を取り入れた住宅コンセプトには「省エネ性能を高めるだけでなく、太陽光発電等の再生エネルギーが活用できる設備を備えて、年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した住宅」という要素が含まれています。

ここで言う「一次エネルギー」とは、石油や天然ガス等の自然界にある資源から直接エネルギー変換を行い活用することができるエネルギーを言います

ZEHは、外皮の断熱性能の大幅な向上と高効率なエネルギー設備・システムの導入を図ることで室内環境の快適性を維持しながら大幅な省エネを実現するものです。ZEH導入で実現する省エネ効果については、現在設定されている基準よりも20%以上の削減効果が可能な数値が求められています。エネルギー効率を20%以上改善するというのは、かなり驚くべき数値といえるでしょう。

そして、ZEH仕様の住宅が、他の省エネ住宅と大きく異なる点は、ZEH仕様では太陽光発電等を用いてその住宅自身がエネルギーを生み出すという点です。単に光熱費が抑えられるだけでなく、売電して収益も生み出せる点が一般的な省エネ住宅とは異なります。

ZEH仕様住宅の普及の見通しについては、現在ではまだ「賃貸住宅」に関しては普及の見通しに不透明感が残る状況で、どちらかと言うと、賃貸住宅よりは「分譲住宅」の方が普及しやすい状況と言えます。

その一番理由は、分譲の場合はZEH導入に伴う住宅ローン控除で税制の優遇措置が受けられるからです。賃貸では、たとえZEHが導入された住宅に入居者が住んだとしても、その入居者には税制の優遇措置による恩恵などもちろんありません。

※ZEHの定義については、以下の経済産業省 資源エネルギー庁の検索サイトでご確認ができます。

*参考URL:知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~新しい省エネの家「ZEH」

ZEH仕様はマンションよりも戸建ての方が普及しやすい?

今のところ、分譲をさらに細かく見てみると、現在では「ZEH仕様の戸建て住宅」が普及しやすい状況にあるといえます。

今、戸建てをZEH仕様にすると、住宅ローン控除の対象となる借入限度額の枠が一般住宅よりも拡大するため、ZEH仕様住宅の購入希望者にとっては「それならZEHに住みたい」という動機が生まれやすくなっています。

戸建てであれば、注文住宅でZEH仕様で設計・施工をしてもらい、好きな場所でその住宅に住むことが可能になります。こうしたことから購入者自らが積極的にZEH仕様住宅を選択しやすい状況にあるといえるでしょう。

一方、分譲マンションでは、デベロッパーが考える設備仕様によって、購入を考えたいと思った気に入った新築物件が見つかっても、そのマンションが必ずしもZEH仕様で建てられるとは限りません。

たしかに最近では、ZEH仕様の分譲マンションが出始めているわけですが、ZEH仕様のマンションは一般のマンションと比べるとやはり設備費用が追加になる分、販売価格が当然高くなってしまいます。

今後は変わっていかざるを得なくなるわけですが、今はまだ販売価格が高くなるとやはり販売がしにくくなる側面もあることから、敢えてデベロッパーがZEH仕様導入を避ける傾向も見受けられます。よって、ZEH導入は、マンションでは選択がしにくく、戸建ての方が普及の見通しが高いといえる状況ではあります。

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ZEHを導入した場合の賃貸オーナーのメリット

ここまでは、ZEH仕様住宅に関する現状をと背景について紹介してきましたが、ここでは本題である賃貸住宅にZEHを導入した場合の「賃貸オーナーのメリットデメリット」から考察していきます。

まず、賃貸オーナーのメリットですが、メリットでは、以下の点が挙げられます。

  • 新築時の補助金が出る
  • 共用部の光熱費を抑えることができる
  • 入居者を獲得しやすくなる

以上の3点です。以下で項目ごとに詳しく説明します。

1.補助金に関して
「低層ZEHマンション」にすると1戸あたり最大で40万円の補助金が出ます。
低層ZEHマンションとは、住宅用途部分が3階以下の住宅を言います。

なお、この補助金に関してはご興味がある方は、Google(グーグル)検索で「ZEH-M 補助金」などと打ち込んで検索をすると、関連トピックスを見ることができます。お試しください。

2.売電することで共用部の光熱費を抑えることができる
これはエレベーターや自動ドア等の共用部に電気を使う設備がある場合、貸主がメリットを享受できる内容といえます。

3.入居者を獲得しやすくなる
ZEHを含めた省エネ住宅は、入居者へ「光熱費が抑えやすい」という良い印象を与えます。
確かに光熱費が抑えやすい物件は、入居者にも人気があり入居してもらいやすくなります。 例えば、ガスの場合を例にとると、プロパンガスよりも都市ガス設備の方が、当然ガス代が安くなるので、都市ガス物件の方が借主に選ばれやすくなります。それと似たような効果が期待できます。

ZEHを導入した場合の賃貸オーナーのデメリット

反対に、賃貸オーナーのデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 建築費が高くなる
  • 大規模修繕費が高くなる
  • それだけでは家賃アップには繋がりにくい

以上の3点です。デメリットについても、以下で項目ごとに詳しく説明しましょう。

1.建築費が高くなる
一般的に省エネ住宅を建築するには、家の断熱性等を向上させる必要があり、一般の住宅を建築するよりも建築費が上がります。ZEH仕様ではさらに太陽光発電等の発電装置が必要となることからさらに建築費が高くなります。昨今は、残念ながら建築費高騰が続いているため、工夫をしないまま建築費だけがアップしてしまうと手痛いデメリットになる可能性があると言えます。

2.大規模修繕費が高くなる
ZEH仕様にするための設備が加わることから、一般の住宅よりも将来の大規模修繕費が増える傾向がありますので、設計段階で費用対効果の分析が大切になります。

3.それだけでは家賃アップに直結しにくい
家賃アップに繋がる仕様の代表格は「インターネット無料/高速インターネット回線設備」「オートロック仕様」「24時間利用可能なゴミ置き場」「宅配ボックス」等々が挙げられます。
もちろん省エネ仕様は入居者にとってもとても魅力的に映り、入居者受けも期待できるでしょう。しかし、これから賃貸住宅の経営を検討される場合、ZEH仕様だけで家賃アップを目論むのは大きな決定打とはなり難いです。

建築費が高い割に家賃アップに直結できない点は、そこだけ切り取られてデメリットにされてしまうと、かえってZEH賃貸住宅の普及の障害になってしまう危険性があります。検討をする上では、やはり、入居者に気に入ってもらえ、且つ利便性・安全性を感じてもらえるような共用部設備とZEH仕様との予算バランスを考えた設計を、建築会社の設計士さんと一緒に考える必要があるでしょう。

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ZEHが導入された賃貸住宅に住む入居者のメリット

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賃貸オーナーのメリットの考察につづいて、ここでは「入居者のメリット」について考察します。

入居者のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  • 光熱費が抑えられる
  • 居住の快適性が上がる

以上の2点です。以下で項目ごとに詳しく説明しましょう。

1.光熱費が抑えられる
一番大きいのは、ZEH仕様の住宅は、従来の住宅よりもさらに断熱性能が大幅向上しているため、暖房費や冷房費を安く抑えることができます。

2.居住性が上がる
断熱性の高い住宅であることに加え、ZEH仕様の住宅に完備された高効率なエネルギー設備によって室内温度を一定にコントールして保ちやすいことから、非常に快適に過ごすことができます。

今の時代は世界的に異常気象などと言われていて、日本でも夏は最高気温38℃といった日が続くことも珍しくなくなりました。夏は高温多湿で、冬は乾燥が激しい日本独特の気象環境においては、夏は涼しく冬は暖かい室内を、今まで以上の省エネで自動コントロールされれば、室内がさらに快適でとても過ごしやすくなるでしょう。

これは女性、小さなお子さん、そして特に、ご高齢者の方や持病を患っていらっしゃる方がいる世帯にとっては、体への負担がたいへん少なく済み、メリットになると思われます。

ZEHが導入された賃貸住宅に住む入居者のデメリット

入居者のデメリットは、これまでのところ特に見当たらないと言えます。
強いて言えば、ZEH賃貸住宅にするために、他の設備仕様を削減せざるを得なかった物件だった場合は、ZEHとは関係のない他の要因でかえって住みにくくなってしまう可能性があるかもしれません。

まとめ

以上、今回は、ZEH仕様の賃貸住宅について解説してきました。
ZEH賃貸住宅とは、年間の一次エネルギーの収支をゼロとすることを目指した省エネ住宅のことです。

賃貸オーナーのメリットには、「新築時の補助金が出る」「共用部の光熱費を抑えることができる」「入居者を獲得しやすくなる」があり、デメリットには「建築費が高くなる」「大規模修繕費が高くなる」「それだけを考えても家賃アップには直結しにくい」という点が挙げられます。

一方、入居する側のメリットとしては「光熱費が抑えられる」「今まで以上の居住快適性が得られる」という点が挙げられます。入居者のデメリットについては、現在のところ特筆すべきデメリットはないと考えます。

ZEH賃貸住宅の普及の見通しについては、省エネ基準適合住宅の義務化を見据え、今後ば間違いなく拡がっていくとものだとは思いますが、今現在のところ、アパート経営を考える賃貸オーナーの意識の変化が追い付いていないこともあって、急激な広がりをみせている状況ではありません。

しかし、建築各社のプロモーションや設計技術の追求や工夫・努力が功を奏し、少しずつ拡がっている気配は感じ取れます。現在、建築する上で設備投資への負担は否めませんが、建築会社と相談をされた上で、設計上で、共用部との予算バランスや配分の工夫ができれば、かなりの差別化物件にできる可能性があります。

今後は、世の中の省エネに対する意識の高まりが拡大すれば、当然、入居者の意識にも変化が生まれていくことになり、賃貸住宅を選ぶ基準も変化するものと思われます。今はまだ、資金的に余裕のある方が中心になってしまうのでしょうが、そうした方々のなかでZEH仕様の賃貸住宅にご興味がある方は、引き続き情報を集めながら検討をされてみても良いのではないでしょうか。この記事の内容が少しでもお役に立てれば幸いです、是非、成功されることを願っております。

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この記事について

(記事企画)イエカレ編集部 (記事監修)竹内 英二
(竹内 英二プロフィール)
不動産鑑定事務所及び宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。
大手ディベロッパーで不動産開発に長く従事してきたことから土地活用に関する知見が豊富。
保有資格は不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。大阪大学出身。

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