【アパート・マンション経営】収益率が変わるオペレーショナルアセットについて解説します【イエカレ】

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このコラムのポイント賃貸アパートやマンションで賃貸経営を行う際に収益を最大化させる方法として「コンセプト住宅」と「オペレーショナルアセット」の2つの方向性が考えられます。

前回の前編では「コンセプト住宅」についてご紹介しましたが、今回の後編では「オペレーショナルアセット」を中心に不動産経営において「収益を最大化する方法」について解説します。

オペレーショナルアセットという言葉については「初めて聞いた」という方々も少なくないかもしれません。一体どのような経営手法でしょうか?早速、一緒に見て参りましょう!

オペレーショナルアセットとは

まずは「オペレーショナルアセット」の定義からお伝えしましょう。

不動産を収益物件として有効活用する上で、

    「時間」や「空間」を小さくすることで賃料単価を上げる。

という理屈があります。それを順を追って解説してみます。

オペレーションという言葉には「運用や操作」といった意味があるのですが、オペレーショナルアセットは直訳すると「運営(運用)をすることで稼ぐ不動産」という意味になります。 その典型的なオペレーショナルアセットに「ホテル」があります。

ホテルという不動産は、よくよく考えると賃貸住宅と非常によく似ています。 各室にバスルームやトイレがあり、ベッドを置くスペースがあることから、基本的な構造はワンルームマンションと酷似していると言えます。ホテルもワンルームマンションも、不動産を使って収益を稼ぎ出す点も同じです。

違いと言えば、ホテルは「宿泊料」、ワンルームマンションでは「家賃」が収入源ということになります。しかし、一般的には売上はホテルの方が高いわけです。それは一体なぜでしょうか?

ホテルは不動産の利用料を、宿泊料として利用者から1日単位で徴収します。 例えば、ビジネスホテルの利用料は、地域によって違いはあると思いますが「1泊6,000円~10,000円」程度でしょうか。

一方、ワンルームマンションは、不動産の利用料を家賃として1ヶ月単位で徴収します。例えば、家賃が100,000円なら、入居者は毎月100,000円の家賃を支払うことになります。

こうしてみると、時間当たりの単価は、月単位の家賃よりも、1日単位の宿泊料の方が高いことが分かります。 そのため、1日当たりで稼げる単価が高いビジネスホテルの方がワンルームマンションよりも収益が高くなる理屈になります。

似たような構造の建物であるにも関わらず、1日単位の宿泊料が取れるのと、月単位の家賃しか取れない違いが生じる理由は、「オペレーション」つまり「運営」の違いからくるものになります。

ホテルは、ホテル事業者が宿泊者向けに広告を出して、宿泊以外にも食事や入浴などのホスピタリティ(おもてなし)溢れるサービス提供することで、宿泊者から宿泊料を取れるわけです。 オペレーショナルアセットの点で言えば、現場スタッフや経営陣といった人が、運営にあたっている点が大きな特徴です。

一方で、ワンルームマンションでは、賃貸オーナー(賃貸経営者)に、ホテルのスタッフのような労働はほとんど発生しません。

賃貸アパートやマンションの経営で得られる家賃収入は「不労所得」とも呼ばれています。 原則としては、入居者からの家賃収入が毎月入る仕組みなので、ホテルに比べれば圧倒的に運営の手間が発生しない点が特徴です。

従って、賃貸型のワンルームマンションは「ノンオペレーショナルアセット」と言われます。 建物の構造や、不動産を使って稼ぐ点もホテルと似てはいますが、運用の仕方の点で区別がされているわけです。

これは、逆の見方をすれば、一般的な賃貸物件では、賃貸オーナーがその運営に関与する度合いが少ないことが、ホテルと比べて収益力が低い状態に留まっているとも考えることができます。 もちろん、賃貸物件の場合は、地域の家賃相場などで比較がされる問題もあります。

しかし、「不動産で稼ぐ」という点においては、完全に不労所得とするのではなく、入居者にとって少しでも付加価値を提供できるようなオペレーショナルアセット型の運営方式にした方が収益力を高められると言えます。

こうした話をお聞きになると「じゃあ、自分もアパートの収益性を上げるためにオペレーショナルアセットを取り入れて、ホテル事業者のようになろう!」と思われるでしょうか?

恐らくはまったく逆で「ホテル事業者のようにオペレーショナルアセットを取り入れるなんて賃貸物件のアパートオーナーにはハードルが高過ぎる!」と思う方々のほうが多いのではないでしょうか?

冒頭で、オペレーショナルアセットの例としてホテルを挙げたのは、オペレーショナルアセットの定義を分かりやすくお伝えする例として最適だったのが理由です。

では「賃貸物件のオペレーションアセットの例は存在するのか?」と問われれば、ホテルの運営よりも簡単なものがあります。

その例として思い浮かぶものに、例えば「シェアハウス」があります。 今や、シェアハウスは、ホテルとワンルームマンションの中間にあたるオペレーショナルアセットと言っても過言ではないビジネスモデルと言えます。

ご存知の方も多いと思いますが、シェアハウスは、1つの住居に複数人の入居者が共同で暮らす賃貸物件です。一般的にはリビングやキッチン、バスルームなどは全員が共同で使用をして、住居の中にある各居室は、各入居者がプライバシー空間として利用します。

シェアハウスは住民同士がその賃貸物件の中で共同生活を行うため、賃貸オーナーは、入居者に対して「一定のオペレーション(運用、運営)」を行って管理していくことが必要になります。

例えば、シェアハウスは住民同士の交流を前提にすることになるため、入居者同士が快適に暮らせるようなルール作りや工夫、必要なサービスを提供することが必要になります。新しい入居者を向かえればウェルカムパーティーを主催したり、住民同士のトラブルが発生したら仲裁してトラブルを治める必要も出てきます。

このように、シェアハウスはワンルームマンションよりも、賃貸オーナーの入居者に対する関与度が上がることから、オペレーショナルアセットの一つと言えるわけです。

シェアハウスは、一つの物件の空間を複数の入居者にシェアしてもらうことで、家賃の単価は上げつつ総額を抑えることができます。 入居者目線から見れば、入居者個々では借りられない広い物件に、安い家賃で住むことができるので、それが大きなメリットになります。

また貸主側から見れば、賃料単価を高くできるため総収入を高くできる効果があります。 そのため、シェアハウスはワンルームマンションの経営よりも収益力を高くできるわけです。

オペレーショナルアセットの例として冒頭に挙げたホテルは「時間の単位」を小さくすることで賃料(宿泊料)の単価が上がりましたが、このシェアハウスの例でみると「空間の単位」を小さくすることで賃料単価が上がったと言い換えることができます。

不動産の有効活用では「時間や空間を小さくすることで賃料単価を上げることができる理屈がある」と説明しましたが、それはこうした内容からそう言えるわけです。

時間や空間を小さくして、不動産の収益力を高めるためには、やはり「運営」が必要になってきます。賃貸オーナー側も多少の手間を加えることで、収益力を最大化することができるわけです。

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オペレーショナルアセットのメリット

オペレーショナルアセットでは、賃貸オーナーが「賃貸物件の運営」というソフト面で差別化を図るため、他の賃貸オーナーに「真似をされにくい」という点がメリットです。

オペレーショナルアセットの例としてホテルを引き合いに出しましたが、ホテルもその運営形態を細分化すると、高級ホテルやビジネスホテル、リゾートホテルといったジャンルがあります。

ホテルという建物(ハード面)は類似しているかもしれませんが、運営面(経営面)では、全く別の差別化が図られています。 極端な話し、高級ホテルのすぐ隣にビジネスホテルが建ったとしても、宿泊する客層、ターゲット層が違うので価格競争は、ほぼ発生しないと言えます。

運営面で差別化を図るオペレーショナルアセットでは、「初期費用も特別大きくはなりにくい」点もメリットです。

例えば、これも例に挙げたシェアハウスで、似たような建物が建てられたとしても、運営面において「外国人向け」「スポーツ観戦好き向け」、最近変わったところでは「筋トレ好き仲間向け」といったものもあるようです。

そうした異なるコンセプトでシェアハウスに集う入居者ターゲット層を変えることができます。要するに、建物仕様のようなハード面で差別化をするわけではないため、初期費用が抑えられやすいのです。

オペレーショナルアセットのデメリット

オペレーショナルアセットのデメリットは、建物所有者である賃貸オーナーが、その運営に関与することで「賃貸経営の難易度が高まる」という点がデメリットになるかもしれません。

賃貸物件の運営に、賃貸オーナーも深く関与していくことは、その能力やアイディア次第で収益が大きく変わってしまうからです。

また、オペレーショナルアセットは、賃貸オーナー自らも入居者へ付加価値を提供して収益のアップを図るわけですから、一般の賃貸住宅を経営するよりも不労所得の要素が薄れることから手間もかかります。

ただ「かもしれない」と書いたのは、逆に「元々、そういうのは好きだし得意!」と言う方々がいるのも確かだからです。

アイディアが出せず、手間も掛かるからムリだと言って「運営を外部に委託すると収益力が下がる」点もデメリットです。

例えば、シェアハウスにはシェアハウス専門の管理会社も存在しますが、シェアハウスの管理委託料は、通常の賃貸物件を不動産管理会社へ委託管理するよりも割高な設定になっています。 一般的な賃貸アパートの管理委託料が家賃収入の5%程度だったと仮定した場合、シェアハウスのそれは7~8%程度になるイメージです。

つまり、家賃収入は上がるため管理を外部に委託しても表面利回りは上がりますが、管理委託料が増えるため「NOI利回り」はあまり上がらないといったことが起こり得ます。

表面利回りとは、不動産の物件価格に対する家賃収入の割合のことです。 NOI利回りについては、前編のなかでも解説をしましたが、これは、年間家賃収入から年間費用を差し引いた収益を物件価格で割った実質利回りのことです。

賃貸オーナーがオペレーショナルアセット型の運営を行い、それによる収益アップの恩恵を受けるには、運営は外部に委託するのは極力避けながら、建物所有者である賃貸オーナーがなるべく自ら運営に関与した方が収益力を上げられると言えます。

この記事のまとめ

以上、今回の後編では、オペレーショナルアセットを中心に「収益を最大化する方法」について解説してきました。

オペレーショナルアセットでは、賃貸物件の運営にオーナー自身が深く関与しながら、時間や空間を小さくして物件の貸し出しを行いながら、賃料単価を上げることができる収益不動産に仕立て上げていく運営形態のことです。

オペレーショナルアセットのメリットは「他のオーナーに真似されにくい」「初期費用も大きくなりにくい」という点です。

デメリットとしては「賃貸オーナーの賃貸経営の難易度が上がってしまう」「だからと言って運営を外部に委託すると収益力が下がる」という点です。

双方には相反するメリットとデメリットが存在します。賃貸物件の収益力を上げる方法として、自分に適した方法を選択して頂ければと思います。

今回の記事では、地主の皆さまが稼げる「理想の不動産経営を行う方法」と題して、前編では「コンセプト住宅」、今回の後編では「オペレーショナルアセット」をご紹介しました。

現在、日本は少子高齢化が急速に進んでおり、都心部に限らず全国的に「もう賃貸アパートや賃貸マンションは、供給過剰になり過ぎてやしないか?」といった声が聞かれるのは確かです。地主の方々のなかには「今さらアパート経営もないでしょ?」と言う方も多いかもしれません。

しかし、これから賃貸住宅の経営を行いたいと検討をされている地主さんがいることも確かです。今回はそうした方々へ向けて、賃貸住宅を経営を行って頂く上で、稼げる不動産経営を目指して頂けるヒントがお伝えできないか?ということもあり、今回2つのアイディアをお伝えしました。

コンセプト住宅やオペレーショナルアセットは、今までどちらかと言えば、賃貸物件の経営の上では「決して主流ではなかった運営形態」かもしれません。

しかし、世の中が多様化されて久しい今、新しく賃貸経営を始めたいと思われている方々は、これまでの既存の賃貸物件にはない手法を導入することで差別化を図ることで、賃貸物件の収益力を上げることができる可能性が残されていることは確かです。

賃貸住宅を供給しているハウスメーカーや工務店各社もコンセプト住宅といった手法を積極的に取り入れながら、賃貸経営プランの提供を行う会社も出て来ました。

これまでアパート経営を検討し掛けたけど「儲からなさそうなのでやめた」といった方々も、まだ少しでも興味が残っているようなら、少し角度を変えて、コンセプト住宅やオペレーショナルアセットに主軸においた賃貸経営プランの情報集めをしてみていただければとも思いますが如何でしょうか?

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この記事の「前編」はこちらです
稼げる理想のアパート経営(前編:コンセプト賃貸住宅とは?)

稼げる理想のアパート経営(前編:コンセプト賃貸住宅とは?)

不動産経営で「収益を最大化する方法」について解説します。土地を有効活用して「せっかく不動産経営を行うなら収益最大化を狙いたい!」と思っているのは誰もが同じことでしょう。今回は「コンセプト住宅」の概念をご案内します。

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この記事について

(記事企画)イエカレ編集部 (記事監修)竹内 英二

(竹内 英二プロフィール)
不動産鑑定事務所及び宅地建物取引業者である(株)グロープロフィットの代表取締役。
大手ディベロッパーで不動産開発に長く従事してきたことから主に土地活用に関する知見が豊富。
保有資格は不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。大阪大学出身。

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