【イエカレ】特定空き家指定の問題を解決したい方|現状から見た空き家のデメリットとその対策を解説

この記事を読むのにかかる時間:10分

このコラムのポイント近年、ニュースや特集番組などで取り上げられることが多くなった「特定空き家指定」に関する問題。空き家を放置しておくことがあまり良くないのはわかっているものの、具体的にどのようなデメリットや損失があるのかを具体的に知る機会は少ないでしょう。

その注意点やデメリット、損失が出てしまうであろう原因を知らなかったがゆえに、想定外の損を経験した人が増えています。

そこで今回は空き家問題の現状からデメリットの詳細、また空き家問題を解決させる方法まで具体的に解説をしていきます。この記事を読めば、空き家問題で頭を悩ませる必要はもうありません。空き家問題をすばやく解決させたい人は必見です!

空き家問題の現状

空き家問題を解決に導くためには、空き家問題の現状を深く知っておく必要があります。 まずは日本全国の空き家に関する問題を把握しましょう。

空き家と定義される住宅の種類

そもそも、空き家にも定義があるのをご存知でしょうか。実は国土交通省が2015年に2月に施行した「空家等対策の推進に関する特別措置法」に以下のような定義が書かれています。

「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。(2 条 1 項)

引用サイト: 国土交通省公式HP「空家等対策の推進に関する特別措置法(概要)」のページ

また空き家の定義の中には「特定空家等」という区分もあり、以下の項目に当てはまった場合に限りこちらが適用されます。[注1]

    ① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
    ② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
    ③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
    ④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

空き家問題を解決するにあたり、まずは自身の空き家が「特定空家等」に属すかどうかを見てみましょう。

空き家は20年間で約1.5倍、40年間で3.15倍にまで増えている

空き家の数はここ20年で着々と増えています。総務省統計局発行の「平成30年住宅・土地統計調査住宅数概数集計結果の概要」によると、平成30年の空き家の数は846万戸となり、平成25年度の調査時(820万戸)よりも3.2%上昇していることがわかりました。

また、20年前の平成10年度と比べると空き家の戸数(576万戸)と比べると約1.5倍、40年前の昭和53年度(268万戸)と比べると3.15倍も増加しているのです。[注2]

都道府県別の空き家率ランキング

都道府県別に空き家率を見てみると、甲信エリアや四国地方の空き家率が高いことが判明しています。以下が、総務省統計局発行の資料による都道府県の空き家率ランキング(二次的住宅を除いた順位)です。

<平成30年度、総住宅数に対する空き家率の高い都道府県ランキング>
順位都道府県平成30年度空き家率(%)平成25年度空き家率(%)
1位和歌山県18.8%16.5%
2位徳島県18.6%16.6%
3位鹿児島県18.4%16.5%
4位高知県18.3%16.8%
5位愛媛県17.5%16.9%
6位山梨県17.4%17.2%
6位香川県17.4%16.6%
8位山口県17.3%15.6%
9位大分県15.8%14.8%
10位栃木県15.6%14.7%
<平成30年度、総住宅数に対する空き家率の低い都道府県ランキング>
順位都道府県平成30年度空き家率(%)平成25年度空き家率(%)
1位沖縄県9.7%9.8%
2位埼玉県10.0%10.6%
3位神奈川県10.3%10.6%
4位東京都10.4%10.9%
5位愛知県11.0%12.0%
6位宮城県11.5%9.1%
7位山形県11.6%10.1%
8位千葉県11.8%11.9%
9位滋賀県11.9%11.6%
10位京都府12.3%12.6%

日本全国で一番空き家率が低いのは意外にも沖縄県(9.1%)であり、人口が多い東京都は4位となり10%を上回る結果となっています。ただし、これは空き家「率」であって、空き家の数だけを見ると順位が以下のように大きく変動するのです。[注3]

<平成30年度、空き家の数が多い都道府県ランキング>
順位都道府県平成30年度空き家数(戸)平成25年度空き家数(戸)
1位東京都809,000戸817,000戸
2位大阪府709,000戸679,000戸
3位神奈川県483,000戸487,000戸
4位愛知県391,000戸422,000戸
5位千葉県381,000戸367,000戸
6位北海道378,000戸388,000戸
7位兵庫県360,000戸357,000戸
8位埼玉県346,000戸355,000戸
9位福岡県327,000戸317,000戸
10位静岡県 281,000戸271,000戸
<平成30年度、空き家の数が少ない都道府県ランキング>
順位都道府県平成30年度空き家数(戸)平成25年度空き家数(戸)
1位鳥取県39,000戸36,000戸
2位福井県45,000戸43,000戸
3位島根県48,000戸45,000戸
4位佐賀県50,000戸43,000戸
5位山形県54,000戸46,000戸
6位富山県60,000戸56,000戸
6位秋田県60,000戸57,000戸
8位沖縄県67,000戸62,000戸
9位徳島県74,000戸64,000戸
9位高知県74,000戸70,000戸

この結果より、空き家率が高いからといって空き家が多いというわけではないことがわかります。

また空き家の数だけをみれば、圧倒的に都心が多いことが判明しました。都心で空き家問題が起こりやすいのは、人口に対して空き家の数も多いからと考えられるのです。

空き家の取得原因ダントツ一位は「相続」

国土交通省が公表している「平成26年空家実態調査の概要」によると、空き家全体の取得原因は以下の通りです。[注4]
取得原因の断トツ一位は「相続」の52.30%、次いで「新築を購入した」の23.40%、「中古を購入した」の16.80%と続きます。

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空き家のままにするデメリット

冒頭で、空き家のまま放置しておくと予想外の損失やデメリットを生む可能性があると述べました。具体的なデメリットは以下の通りです。

    ① 近隣トラブルを起こしやすくなる
    ② 資産としての価値が下がっていく
    ③ 特定空き家に指定され、固定資産税が最大6倍になる可能性がある

それぞれ詳しく見ていきます。

近隣トラブルを起こしやすくなる

空き家を放置することはすなわち管理が行き届かない可能性があることを指します。
そのため管理が怠ると、外観だけではなく様々な箇所の劣化が起き始めるのです。

そして劣化が進んだ空き家は、「悪臭」「シロアリやねずみなどの害虫・害獣の繁殖」「空き巣や不審者の拠点」「家屋崩壊」などのトラブルを招くリスクを高くします。

こうしたリスクが近隣住民とのトラブルのもとになり、管理するよりもより余計なデメリットを生むことにつながるのです。 またもし、放置後に管理する方向になった場合、修繕費などの経済的負担や時間、労力を割くことになってしまいます。

資産としての価値が下がっていく

現代の日本では税務上で建物の価値を定めております。 例えば、建物が木造だった場合、耐用年数が22年を超えると建物の価値を0円として計算するようになっています。そのため、空き家を放置しておくと知らない間に耐用年数が22年を上回ってしまい資産の価値が0になってしまったという例も少なくないのです。

「特定空き家」に指定され、固定資産税が6倍になる可能性がある!?

「特定空き家」とは、国土交通省が定めた「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」のうちの「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)に載っている条件付きの空き家のことを指します。[注5]

    ① そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
    →建物の一部分の破損、倒壊の恐れがある建物のこと

    ② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
    →ゴミの放置による害虫・害獣の発生や繁殖が進み、それによる異臭や衛生上害を及ぼす危険があること

    ③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
    →落書きや雑草、ツタなどが増加し周辺の景観を損なわせていること

    ④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
    →不審者や野犬の拠点になってしまうことで近隣住民に迷惑や危険を及ぼす可能性があること

ちなみに、上記の4つのうち1つでも当てはまってしまうと、特定空き家に指定されてしまうので注意しましょう。

この「特定空き家」に指定されてしまうと、まず自治体の空き家に対する立ち入り調査が入り改善を要求されます。そこで改善ができれば「特定空き家」の指定は解除されるのですが、勧告を受けてしまうと「住宅用地の特例」という枠組みから除外されてしまうのです。

この特例で固定資産税を安く済ませることができていたため、除外されれば当然、最大6倍にまで跳ね上がる可能性が出てきます。

以上のように、空き家を放置すると経済的、精神的、社会的など各方面から予想外のデメリットを被ることになってしまうのです。何一つ良いことはありません。


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空き家を維持するためには?

空き家を解体するのではなく維持する方向となった場合、必要なのは「維持費」と「定期的な管理・メンテナンス」の2つです。

また空き家を空き家のままではなく他の用途として活用することもできます。それぞれ詳しくみていきましょう。

空き家の維持にかかる費用は毎年数十万以上が多い

空き家の維持にかかる費用には以下の4つが当てはまります。

    ① 固定資産税・都市計画税
    ② 住宅管理費(修繕費)
    ③ 各種保険(火災保険、地震保険など)
    ④ 住宅ローン(残っていれば)

固定資産税や都市計画税は2つ併せて年1.7%程度ですが、それでも毎年数万円以上はかかるでしょう。

ちなみに固定資産税や都市計画税は財政事情が苦しい地方の市町村などは高めに設定されていることが多いのです。理由としては、市町村の大事な収入源になるからというのが挙げられます。

また他にも、特定空き家に指定されないための工夫も必要です。特に劣化が進めば進むほど修繕費は高くなりますし、万が一の場合に備えて保険も入っておく必要があるでしょう。

これらの費用を統合すると、最低でも年に数十万円以上はかかるといっても過言ではありません。

定期的なメンテナンスをする

上述のように、定期的に空き家のメンテナンスや管理をすることは維持をするにあたり必須事項です。そのため、自分で色々な箇所を点検して回ったり環境の手入れを行なったりと色々やることがあるため、大変かもしれません。

業者に任せるという手もありますが、費用が余計にかかる点を考慮したうえで依頼しましょう。

空き家を上手に利用してみる

空き家を所有している人の中には、空き家を色々な方法で活用している人がいます。 具体的な活用例として挙げられるのは、主に以下の3つです。

    ① 賃貸物件として貸し出す
    ② 民泊施設として貸し出す
    ③ 事務所として企業に貸し出す

以上のように、空き家をそのまま残すのであれば企業や個人に貸し出したり、宿泊施設として経営したりが可能です。特に国際大会やオリンピックが日本で行われるあたりでは安く泊まることができる民泊などは重宝されるかもしれません。

また、空き家を思い切って更地にすると活用の幅が広がります。駐車場や自動販売機の設置、貸農園などが可能です。

ただし、どの活用方法も土地と物件の両方で安全性と利便性が伴わっていないと活用することはできないでしょう。不動産業者と相談をし、どの活用方法がベストなのかを検討してみるのがおすすめです。

空き家問題の解決策

空き家を活用する必要性がないと判断したのであれば、早めに解決策を投じた方が良いでしょう。解決策としては、主に以下の2つが挙げられます。

    ① 空き家管理サービスを利用する
    ② 空き家を売却する

近年は「空き家対策特別措置法」によって空き家に対する監視が厳しくなってきているので、悩んでいるのであれば思い切って決断してしまうのがおすすめです。

空き家対策特別措置法とは?

「空き家対策特別措置法」とは空き家の急増に伴い成立された法律です。 2030年までには2,000万件以上になると言われている空き家と、それに関連した衛生上や対人関係のトラブルを起こさないために作られ、この法律が制定されてからは自治体が空き家に対して強制措置を取れるようになりました。

具体的には「特定空き家に指定し、固定資産税の増加」「空き家所有者に足して勧告や命令を行うことが可能」「行政執行により所有者に変わって空き家解体を行うことが可能」など強制力の強いものが多いです。

ただし空き家に改善が見られた場合はこの法律は適用されません。あくまで助言や指導、勧告を所有者が無視した場合に適用されるものであるため、空き家問題を大きくしたくない場合は管理をするか売った方が良いのです。

空き家管理サービスの利用

所有者の中には空き家をすぐに売ることができない、また管理できる場所まで物理的に距離がある人もいるでしょう。そのような場合に役立つのが「空き家管理サービス」です。

「空き家管理サービス」とは、空き家の所有者に代わって空き家の巡回や衛生上の管理などをもろもろ行なってくれるサービスのことで、近年注目が集まっています。

利用方法は簡単で、基本的には業者の公式ホームページへアクセスし、管理の申し込みフォームから申し込むだけです。その後、業者が空き家の管理状況を把握するために業者とともに空き家へ赴き大まかな見積もりを立てます。そこでどんな管理を具体的な説明を受けて納得し次第契約という運びとなるのです。

これらのサービスのメリットは以下の通りです。

    ● 自分で管理をする手間が省ける
    ● 企業によっては専門的な目で管理をしてもらえる
    ● 放っておいた場合と比べて「特定空き家」に指定されにくくなる

ただし、メリットがあればデメリットもつきもの。以下の点には注意しましょう。

    ● 完全に管理ができる保証はない
    ● 管理業者に支払うお金がかかる
    ● 業者によってサービスの質が違う
    ● 地方で事業展開をしている企業は少ない
    ● 都内のみ対応の企業はほとんど。出張管理はほぼない

特に金額面は、月額料金にプラスして色々な管理など付加サービスを「オプション」として選ばせる業者が多いです。そのため、あれもこれもとオプションをつけると年間の管理金額が逆に家計への負担となる可能性があります。

空き家管理サービスの業者を選ぶときは、以下の2点に留意をして選ぶと良いでしょう。

    ● 月額料金が安すぎないか
    月額料金が安すぎる場合、オプションサービスが高額な場合があります。
    ● サービス内容が明確に説明されているか

公式ホームページなどで、サービスの範囲がしっかりと明記されているところを選びましょう。サービスの幅がわからない場合は、電話をして聞いてみることをおすすめします。

空き家を売却する

管理が面倒だったり、業者に頼めるほど経済的な余裕がなかったりする人は思い切って売却してしまう方が良いでしょう。売却してしまえば空き家にかかるはずの管理費などが浮きます。

ただし上述したように、築20年以上経っている建物に関しては建物の評価額自体が0になってしまう場合も考えられますし、逆に高額で売れてしまい所得税などが多くかかってしまう可能性もあるのです。

また、自分の力だけで不動産を売却することはほぼ不可能なので、不動産屋を介して買い手を見つける必要があるでしょう。

では具体的に何をすればいいのかを説明します。

まずは不動産売却に強い不動産会社を選びましょう。空き家や古家売買の実績が多く、空き家がある地域や土地事情に精通している会社が望ましいです。

これら2つの条件を満たしていないと不動産の買い手が見つかるのに時間と労力がかかってしまう可能性があります。

強い不動産業者を見つけたら、売り方を考えてください。売り方は主に以下の4つです。

    ① 中古戸建てとして売る
    ② リフォームして売る
    (但し、買い手が自分の好みでリフォームをしたがるケースがあるので要相談)
    ③ 土地として売り、買い手が見つかってから取り壊す
    ④ 買い手が見つかる前に更地にして売り出す

売り方は、地域や不動産の価値、地域事情によって変わります。不動産業者と相談して、どの売り方がベストな選択なのかを充分吟味してください。

まとめ


空き家の数は都内を中心に年々増え続けています。それと同時に空き家トラブルも多くなってきました。そしてついに、行政が空き家問題に対し重い腰を上げました。

そのため、いままでは放っておいても大丈夫だと思われていた空き家が次々と自治体によって措置されています。

ただ上述したように、空き家は放っておくと管理するよりも面倒なことが起きたり、余計な出費を生んだりする可能性が出るため、目をそむけずに、すぐさま「管理する」「売却する」「他の活用方法を探す」の3択から選んだ方が良いでしょう。

それぞれの選択が空き家の所有者にどのようなメリット、デメリットを及ぼすかは個人差がありますが、少なくとも空き家を放っておくよりはトラブルの回避になります。

もしいま「空き家問題を抱えて困ってはいるけど何もしていない」「これから空き家を抱えそうで不安」と言う方は、早く解決させることをおすすめします。ぜひこの記事を参考にして、空き家問題から解放されましょう!

【初回公開日2019年10月23日】

[注1] https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
[注2] https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/tyousake.html
[注3] https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/tyousake.html
※「平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果」内の数値を参考に順位を作成
[注4] https://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
[注5] https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000100.html

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