空き家を「普通借家ではなく定期借家」にすべき?メリット・デメリットを徹底比較

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このコラムのポイント

空き家を賃貸に出したいものの、「一度貸したら長期間住まれてしまうのではないか」「立ち退きトラブルに巻き込まれたくない」と不安を抱くオーナーは少なくありません。

その不安を解消する最適な手段が「定期借家契約」です。一般的な普通借家とは異なり、契約期間が満了すれば確実に退去してもらえるため、将来の計画が不確定な空き家活用において非常に強力な選択肢となります。

本記事では、空き家オーナーが知っておくべき普通借家との決定的な違い、具体的なメリット・デメリット、そしてリスクを最小限に抑えるための判断基準をわかりやすく解説します。

記事の後半では、面倒な管理をプロに任せる「リロケーションサービス」についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。

目次

1.空き家に「定期借家」を選ぶべき?まず普通借家との違いを理解する

空き家活用において最も重要な決断は「どの契約形態を選ぶか」です。多くのオーナーが悩む「普通借家契約」と「定期借家契約」について、まずはその決定的な違いを解説します。

1-1.普通借家と定期借家の最大の違い

両者の最大の違いは「契約更新の有無」です。

普通借家契約は、入居者の「住み続ける権利」が強く守られる契約です。契約期間が満了しても、入居者が希望すれば原則として契約は更新されます。オーナー側から更新を拒絶するには、正当な理由(正当事由)と、場合によっては多額の立ち退き料が必要となります。

定期借家契約は、あらかじめ決められた契約期間が満了すれば、更新されることなく必ず契約が終了します。双方が合意した場合のみ「再契約」を行いますが、オーナーが拒否すれば入居者は退去しなければなりません。

「将来は自分で住むかもしれない」「いつか売却する予定がある」という空き家オーナーにとって、期間をコントロールできる定期借家契約は非常に安心感のある仕組みといえます。

2.空き家活用における4つの判断基準

空き家を貸し出す際は、一般的な賃貸経営とは異なる視点が必要です。

以下の4点を基準に契約形態を検討してください。

  • 将来の売却計画:「3年後に売りたい」などの計画がある場合、退去時期が確定できるかが重要です。

  • 自己使用の可能性:転勤から戻る、親族が住むなど、将来的に空き家を使う予定があるか確認します。

  • 建物状態と修繕:老朽化が進んでいる場合、取り壊し前提で期限付きの貸し出しにするか検討が必要です。

  • 管理コストと手間:遠方の空き家管理にかかる負担と、家賃収入のバランスを見極めます。

3.空き家を定期借家にするメリット|普通借家より安全と言われる理由

なぜ空き家活用では定期借家が推奨されるのでしょうか。その理由は、オーナー自身がリスクをコントロールしやすい点にあります。具体的なメリットを見ていきましょう。

3-1.契約終了時に確実に退去してもらえる

最大のメリットは、期間満了とともに物件が確実に返還されることです。

普通借家契約では、一度貸すと入居者が居座り続けるリスクがあります。「相続した実家を売りたい」と思っても、入居者がいる限り自由な売却活動は難しく、売却価格も下がる傾向にあります。

定期借家であれば契約終了日が確定しているため、売却や自己使用の計画が狂うことはありません。これは資産の流動性を確保する上で強力な武器となります。

3-2.長期トラブルのリスクを遮断できる

定期借家契約は、入居者トラブルを早期に解決する手段としても機能します。

賃貸経営では、家賃滞納や近隣トラブルが発生することがあります。普通借家の場合、法的な借主保護が強く、多少のトラブルでは契約解除が認められにくいのが現状です。

一方、定期借家であれば、契約期間満了時に「再契約しない」という選択をするだけで関係を終了できます。契約期間を短めに設定しておけば、不良入居者リスクを最小限に抑えることが可能です。

3-3.建物の寿命に合わせて貸しやすい

老朽化が進んでいる空き家でも、定期借家なら貸し出しやすくなります。

「あと5年で取り壊す予定がある」「大規模修繕までは現状のまま貸したい」といった場合、期間を限定することで、入居者に建物の状況を納得してもらった上で貸し出しが可能です。

普通借家で貸してしまうと、建物の寿命が来ても入居者が退去せず、修繕義務だけがオーナーに重くのしかかる事態になりかねません。

3-4.オーナーの意向で期間を柔軟に設定できる

定期借家契約は、契約期間を自由に設定できます。

普通借家契約において1年未満の契約期間を設定すると「期間の定めがない契約」とみなされる法的リスクがあります。

しかし、定期借家にはその制限がありません。「1年未満の短期」から「10年以上の長期」まで、オーナーのライフプランに合わせた柔軟な設計が可能です。

4.空き家を定期借家にするデメリット|貸しづらさと対策

メリットが多い定期借家ですが、デメリットも存在します。リスクを理解し、適切な対策(カバー)を行うことが重要です。

4-1.入居者が集まりにくい可能性がある

「いつか退去しなければならない」という条件は、長く住みたいファミリー層からは敬遠される要素です。普通借家に比べて入居希望者の母数は少なくなります。

【対策・カバー】

ターゲットを明確に絞り込みましょう。「自宅の建て替え期間中の仮住まい」「転勤で数年だけ住みたい人」「DIYを楽しみたい層」など、期間が決まっていることを許容できる層へ訴求することで解決できます。

4-2.家賃相場が低くなりやすい

期間制限というデメリットがある分、周辺の家賃相場よりも設定を低くしなければならないケースが多く、一般的には相場の8〜9割程度になります。

【対策・カバー】

家賃単価の低下よりも「空室期間の解消」を優先すべきです。また、礼金や更新料を不要にするなど、初期費用を抑えてお得感を出すことで、家賃の値下げ幅を最小限に留める工夫が有効です。

4-3.契約手続きに厳格なルールがある

定期借家契約を締結する際は、通常の契約書とは別に「期間満了により契約が終了し、更新がないこと」を記載した書面を交付し、説明しなければなりません。この手続きを怠ると、法的に「普通借家契約」とみなされてしまうリスクがあります。

【対策・カバー】

この手続きは、空き家管理や定期借家の実績が豊富な不動産会社に依頼することで回避できます。自己判断で契約を進めず、プロの実務に任せることが安全です。

5.どっちが正解?空き家の特徴別おすすめ契約形態

ご自身の空き家の状況にはどちらの契約が適しているのか、ケース別で整理します。

5-1.普通借家が向いているケース

長期的な安定収入を最優先する場合に適しています。

  • ・投資目的で購入し、収益性を最大化したい。

  • ・駅近など立地が非常に良く、常に需要がある。

  • ・将来自分で住む予定も、売却する予定もない。

  • ・入居者に長く住んでもらい、入れ替わりの手間を減らしたい。

5-2.定期借家が向いているケース

リスク回避や、将来の選択肢を残したい場合に適しています。

  • ・相続した実家で、将来どうするか未定である。

  • ・建物が古く、将来的な取り壊しや売却を想定している。

  • ・転勤期間中だけ貸し出し、戻ってくる予定がある。

  • ・立ち退き料などの金銭的リスクを絶対に負いたくない。

個人の空き家オーナーの多くは、こちらの「定期借家」のケースに当てはまることが多いでしょう。

6.定期借家で失敗しないための実務ポイント

実際に定期借家で契約を進める際、トラブルを防ぐために押さえておくべき実務ポイントです。

6-1.契約書の条文と特約を徹底する

契約書には必ず「本契約は期間満了により終了し、更新はない」旨を明記します。

また、期間が1年以上の場合は「期間満了の1年前から6ヶ月前までに終了の通知をする」義務があるため、その通知に関する条項も確認が必要です。

原則として中途解約ができない定期借家ですが、転勤や療養などやむを得ない事情に備え、入居者側からの解約権についての特約を入れておくと、入居付けがしやすくなります。

6-2.設備の不具合は「告知」で防衛する

空き家は設備が古くなっていることが多いため、契約前の告知が不可欠です。

「エアコンは残置物であり修理義務を負わない」「過去に雨漏りの履歴がある」などを重要事項説明書や契約書に記載しましょう。

事前の合意があれば、入居後の修繕トラブルを回避できます。

6-3.家賃と期間のバランスを見極める

期間が短いほど、家賃を安く設定する必要があります。

1〜2年の短期契約では引っ越しコストを考慮して家賃を下げ、5年程度の期間があれば相場に近い設定にするなど、バランス感覚が求められます。

地域の需要を熟知した不動産会社と相談して決定しましょう。

7.手間なく貸すなら「リロケーションサービス」という選択肢

定期借家のメリットを享受しつつ、管理の手間をゼロにしたい方には「リロケーションサービス」が最適解です。

7-1.リロケーションサービスとは

転勤などで留守にする自宅を、一定期間だけ賃貸に出すことをサポートするサービスです。運用のベースには「定期借家契約」が用いられます。

「戻る家を守りながら収益を得る」ことに特化しているため、空き家オーナーのニーズと合致しやすい仕組みです。

7-2.一般的な管理との違いとメリット

最大の違いは、入居者の質と保証の手厚さです。

  • 優良な入居者:上場企業の社員や公務員など、法人契約を中心に入居者を斡旋するため、滞納やトラブルリスクが極めて低くなります。

  • 確実な明け渡し:多くのサービスで「明け渡し保証」が付帯されており、万が一居座りが発生しても代行会社が対応します。

  • 管理の丸投げ:設備故障や近隣対応など、全て代行会社が行うため、オーナーの手間はほとんどありません。

8.まとめ|リスクを抑えて空き家を守るなら「定期借家」

空き家活用において、資産を守りながら収益化するためのポイントを振り返ります。

  • 定期借家は相続空き家に最適:期間満了で確実に契約終了できるため、将来の売却や自己使用の計画を阻害しません。

  • トラブルリスクを遮断:更新がないため、不良入居者リスクや立ち退き料の発生を回避できます。

  • 入居付けには工夫が必要:ターゲット選定と、期間に応じた適正な家賃設定が成功のカギです。

  • プロへの委託が安全:管理負担や法的リスクを避けるなら、リロケーションサービスの利用が有効です。

空き家を放置することはリスクですが、安易に普通借家で貸してしまうのもまた大きなリスクです。

「定期借家」の仕組みを正しく理解し、ご自身の状況に合った運用を選んでください。

もし手続きや管理に不安がある場合は、空き家管理の専門家やリロケーション会社へ相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

9.よくある質問(FAQ)

9-1.Q1. 資料請求をすると、強引な営業をされたりしませんか?

A: その不安は多くの読者が持つ最後の躊躇ポイントですが、資料請求後の対応は明確に選べます。

資料請求は「比較検討をスムーズにするための情報提供」であり、強引な営業が目的ではありません。むしろ、資料を読むことで以下が自己判断できるようになります。

  • ・費用の透明性
  • ・他社との違い
  • ・実際の管理内容(リロケーション・賃貸管理など)

判断材料が増えるため、迷いの時間が減る=検討が前に進むという構造が働きます。

9-2.Q2. 今すぐ契約する予定はないのですが、資料請求だけしても大丈夫ですか?

A: むしろ「今すぐ契約する気はない人」が最も資料請求すべきです。理由はシンプルで、契約を急がないタイミングだからこそ、冷静に比較できるからです。

資料には次の判断軸がすでに整理されています。

  • ・普通借家 vs 定期借家の比較(メリット・リスク)
  • ・管理委託の費用と回収見込み
  • ・入居者トラブルや原状回復の範囲
  • ・リロケーションの適性

この情報を早い段階で手元に置くことで、「焦ってから探す」という最悪の判断を避けられます。

9-3.Q3. 他社と比較する時間がないのですが、資料は“判断の手間”を減らしてくれますか?

A: はい。資料は「比較に必要な要素を短時間で揃える」ためのツールです。特に空き家の定期借家化やリロケーションは、判断ミス=年間数十万円レベルの機会損失につながります。

資料では以下を「最短経路」で確認できます。

  • ・想定家賃・利回りの目安
  • ・契約期間設定の注意点
  • ・トラブル発生率と回避策
  • ・どのタイプの物件が定期借家と相性がよいか

つまり、情報収集コストを大幅に削減し、判断の質を一段上げるためのショートカットになります。

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